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2009年02月24日

~日本の“技”で世界を牽引~ベトナム高速鉄道計画


新たな経済・社会的発展の期待を担う
ベトナム高速鉄道計画。
日本・JR東海の技術支援も決定、
着実に前進しつつある。


ベトナムの首都ハノイと南のホーチミンとの
両主要都市を結ぶ交通網は、
約1700kmにも及ぶ南北統一鉄道と、
空路や高速道路(陸路)が主体である。

だが、鉄道は時間を要し、高速道も部分開通で
両都市間は、物理的にも時間的、費用的にも
依然として遠い。

交通の大動脈整備

このような状況下で、
現在、高速鉄道計画が進行中だ。

計画実現に向けベトナム鉄道当局は、
日本JR東海に技術支援を要請、
2008年12月、合意にいたった。
(出典:ベトナム通信社)

JR東海は、台湾など海外に対して、
技術支援実績もあり、
今回もその経験が生かされるだろう。

だが、開発や開業後における課題もある。

その1:他国との競合

海外に対する高速鉄道の技術支援・導入では、
常に、TGVなど欧州勢との競合にさらされる。
最近の台湾新幹線の場合では、
一時は欧州システムを導入予定だったが、
地震対策がより強固な日本のシステムが
車両部分を中心に導入されたという経緯がある。

今回、技術支援で合意したが、
日本としても、まだまだ油断は禁物だ。

その2:莫大な費用

関係当局の試算では、
投資総額は約558億ドルに上る。
中長期的には必要な投資だが、
その負担は決して軽くない。

さらに費用が膨らむ可能性も高く、
プロジェクトの効率化と管理が必要だ。

その3:交通システム全体の整備

“大動脈”となる高速鉄道が開通しても、
“毛細血管”の都市交通が未完では、
経済の循環は十分に機能しない。

地下鉄や在来線といった都市内交通網は、
ベトナムはまだまだ未発達であり、
全体と将来を見据えた整備と計画が必要だ。

日本が担う二つの使命

一方で、このような対外支援は、
日本の持つ「技術と知恵」を
内外に示すチャンスでもある。

技術:開発と継承

長引く経済不況を背景に、
企業の人材、事業投資は抑制傾向にある。
だが、ベトナムでの活躍が期待される日本は
技術開発と人材育成も怠ってはいけない。

そんな中、2月に発表された
JR東海の国内リニア計画に関連した、
1000人規模の人材採用・育成計画は、
技術立国・日本の姿勢として評価に値するもので、
NHKや日経など主要メディアも取り上げた。

知恵:環境や地域への配慮

1900年代初頭に、
広大な鉄道網を有していたアメリカも
その後のモータリゼーションの波により
衰退の路をたどることとなった。
しかし、環境意識の高まりを背景に
長距離貨物輸送を中心に、
鉄道の環境優位性が見直されつつある。

また、安全性や効率に賛否はあるが、
フランスの原子力発電推進や
ドイツのクリーン発電奨励を例とし、
エネルギー自給率の低い日本も
取り組むべきテーマは多い。

そして、日本の“お家芸”ともいえる
既存技術の改善・改良を通した
省資源・省エネルギーへの取り組みは、
先進工業国の資源・環境問題のみならず、
新興国の今後の発展にも十分寄与するものであ。

京都議定書などで掲げられた環境対策だけでなく、
また、マネーゲームの類でもなく、
日本の持つ“技”で、世界を牽引する
技術面での日本のイニシアティブにも期待したい。



(湯之上)

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