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2011年02月08日

インフラ輸出とその課題


高速鉄道、原子力発電、水道設備の輸出等々。
インフラ輸出が話題に上らない日は無いほど、
インフラ輸出は注目されている。


ベトナムは、高速鉄道や原子力発電所の輸出先として、
官民挙げて協力し、原子力発電は受注にこぎつけた。

日本の技術が世界中に広まり、外貨獲得につながる事は
大いに喜ばしい事である。
しかしながら、楽観的すぎる建設資金の返済計画は、
作ってもらってしまえばこっちのもの!といったベトナムのしたたかさを
感じずにはいられない。

今回はその問題点と課題を明らかにしたい。


~高速鉄道~
巨額の建設費導入にあたり、各国高速鉄道導入における
ケーススタディーを熟知、以下1960年の東海道新幹線導入時のと
比較してみたい。

総工費と経済環境
 早大トゥ氏によると、東海道新幹線の総着工費は3800億円
 (1960年 日本のGNPの2.4%)。
 世界銀行からの融資は288億円(8000万USD 総着工費7.6%)
 61年に借入し、20年で完済。
一方ベトナム。
 総着工費は560億USD(GDP比60%程度)
 その多くを外国融資に頼ろうとしており、
 日本同様40年での返済を明言するズン首相。
 (返済期間に関しても誤りがあった可能性)

そもそも、高速鉄道導入前の鉄道敷設状況や利用状況の比較も、
高速鉄道導入以前に整備すべき事がある事を示唆させる。

日本は、60年の段階で総延長2万キロに及ぶ鉄道網を全国に確立。
鉄道利用総数120億人(ベトナム 08年 1130万人)。
鉄道貨物輸送量540億トンキロ(ベトナム 08年 40億キロトン)

また、台湾での高速鉄道導入(新幹線)に際し、
その需要予測を大幅に下回っており、
高速鉄道の運営にまで関与する資金回収リスクが決して小さくない事が、
この高速鉄道事業輸出を各国がためらう理由の一因ともなっている。



~原子力発電所~
電力事情
 ベトナムの電力不足は深刻である。
 2020年まで毎年13%の電力需要増を予測。
 しかしながら、2010年は、ハノイ、ホーチミン市などの都市部でも
 停電が頻発し、優先的に電力を供給されるはずの
 工業団地もその被害を被っている。

以前は、ベトナム電力公社(EVN)が、
全国の発電・送電・配電事業を実施してきたが、
09年末時点でも発電量の30%がEVN以外のオーナーである。

電源開発計画達成率は50%程度
 ・EVN以外のオーナーの資金不足による工事延期
 ・工期や用地買収の長期化
 ・燃料高騰
 ・安い電力卸売価格(年5%以上の値上げは首相令が必要)
等々の理由により、ここ数年は電源開発計画達成率は50%程度。
原子力発電所導入の背景には、
建設資金の手当、ODA等外国政府資金がつきやすく、
降雨量や燃料高騰に影響を受けにくい、
と行った事情もある。

日本復興期における電力政策
 戦後復興期の1951年(昭和26年)、52年。
 「電気事業の自立なくして、今後の日本の復興の因である
 電力需要にどう応ずるのだ。
 政府が大衆におもねっているようでは、これからの日本はどうなる。
 文句があるなら対案を出せ」
 と、電力の鬼こと松永安左エ門翁は、
 適正原価に基づく採算可能な電気料金を政府に認めさせ、
 平均30%の電力の値上げ率を認めさせ、
 電力業界は活気を取り戻すとともに、
 海外からの資金調達及び最新鋭の発電機の導入に成功。
 我が国の復興に大きく貢献した。

解決方法
 利益ないところに投資無し。

 かつての日本が、電力の大幅値上げにより、
 その投資資金を捻出したばかりか、
 その将来性を担保に外国からの資金調達。
 産業の育成に寄与した事実を見るに、
 電源開発に至っては、
  ①国民への売電価格を大幅に上昇させることでの
    収益事業としての安定と有望さを国内外に示す
 事が最重要課題である。


一時的には大きな混乱が予想される値上げではあるが、
政府が大衆に迎合すること無く英断し、
中長期的な我が国のパートナーとして成長してゆく事を期待したい。



大木健司(Kenji Oki)
株式会社ブルーチップ・コンサルティング
URL   http://www.bcc-jp.com/


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