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2012年04月19日

動き出した日本の投資家たち


ベトナムでは多くの地方が裾野産業の開発目的で日本企業の投資誘致に懸命だが、
ベトナムには商業、不動産、IT、サービス、日用品生産等の分野で活動している
日本企業から注目が集まっている。


日系企業の動きは3年~4年前から予測されていたが、この傾向はますます明確に
なってきており、多くの日本企業が色々な方法でベトナムに進出している。

貿易注視の商社

日本からベトナムに資材や機械を持ち込み、輸出製品の生産工場を建設することが
日系企業の一般的なスタイルである。しかし、最近は販売ネットワークの構築による
ベトナムの各店舗やスーパーマーケットで日本と外国製品の販売開始を睨んでいる。

Family Mart、MiniStop等、日本のコンビニエンスストアがホーチミン市で店舗数を
拡大している。先日も日本のAeonグループが正式なベトナム進出を果たしており、
Celadon City(Ho Chi Minh市、Tan Phu地区)敷地内に3.5ヘクタールの
ショッピングセンターを設置する計画を発表した。それによるとAeonが約1億USDを
投資し、完成は2014年の予定。同センターは多目的なショッピングセンターとして
平均的な所得者を対象にしている。

また、世界の有名ブランド製品を扱う高島屋もベトナムに注目しており、グループは
ホーチミン市第1地区の一等地に1万5,000平米を借用する契約を締結した。
高島屋グループは2015年にベトナム市場への参入を実現するため、駐在事務所及び
ホーチミン市での子会社設立を申請している。

Jetroによると、日本の小売企業がベトナム市場に関心を持っていることは2009年に
分かった。ベトナムではその時点で初めて100%外資系の小売企業に門を開いた。

日本の小売企業はベトナムでの営業チャンスを、人口が若く現代的な小売モデルが
まだ少ないため、世界のどの企業にとっても大きいと考えている。ベトナム政府では
ベトナム小売会社の活動を保護するために様々な対策を講じているが、日本企業は
積極的なベトナム進出を展開している。

ベトナム国内の消費傾向

国民所得の改善が進み、消費者の好みが日本人に近いことはベトナム消費市場が
日本企業にとって魅力的な要素となっている。人口が若くて多いため、日本企業は
日用品の生産販売分野に注目している。専門家は日用品の生産販売分野が急速に
成長していると分析した。

ベトナム市場への早期進出を図るため、ベトナム企業の買収や戦略株主としての
提携は日系企業が優先される。M&Aは初期投資より時間を節約することができる。

また、円高の影響で日本の大手企業が資金源を確保して市場を拡大させるため、
ベトナム企業の株式を買収する傾向が強くなっている。つい最近の事例では、
ユニチャームがDiana Vietnamの株式95%を買収するために1.28億USDの
出資を行っている。

その他の日用品生産販売分野で典型的な例がキリンがIFS (Interfood)の
支配比率まで株式を買収した案件や大王製紙がSaigon紙会社を買収した案件だ。
江崎グリコがKinh Doの資本金10%に相当する株式を買収したケースもある。
GlicoはKinh Doへの投資を通じて同社の持つベトナム市場でのネットワークで
自社製品の販売促進に期待している。

江崎グリコの江崎勝久社長兼会長は「我々はKinh Doとの協力を通じてベトナムで
最も強いKDCのお菓子販売ネットワークを利用したい」と述べた。

専門家によると、現時点ではベトナムの生産業は国内での金利が高過ぎるため、
企業の株価が安くなっているので、投資活動にとって有利なタイミングであり
買収に動く日系企業が急増している。

計画投資省外国投資管理局の統計によると、日本はベトナムにとって最大の投資額を
持つ国であり、新期投資申請額及び増資額の88.8%(約23億USD)を占めている。

年初3ヶ月で新期投資申請額と増資額は26.3億USDに達し、前年同期の63.6%に
相当している。

中でも不動産分野は最大の投資申請額を記録した。


不動産

JETROによると、ベトナム不動産は数年前まで日本の投資家に注目されていなかったが、
現在は状況がやや変化している。

国際不動産専門家のAlex Finkelstein氏によれば、日本の投資家はベトナムの不動産に
高い関心を寄せている。

日本のTokyu Corp. とBecamex IDC Corpが12億USD規模の合弁会社を設立して
Binh Duong省で71ヘクタールの町づくりを通じたことで、日本による多額の資金導入が
明白となった。

ベトナムの不動産市場は投資資金が不足しており、プロジェクトのデベロッパーが例えば、
プロジェクトを買収して外国パートナーと提携する等、様々な方法で資金を調達している。

多くの土地を所有するデベロッパーは、その一部を売って他の案件を実施するための
資金を調達したがっており、日本の投資家にとって大きなチャンスとなっている。

Tama Global Investment Pte は2011年12月末、COTECLAND株式20%の買収を通じて
ベトナム不動産市場に進出した。今後、Tamaは現地パートナーに工事現場監督技術を移し、
工事費用の節約や工事の品質向上に関するノウハウを伝える予定である。

オフィスビルのマーケットでは、ある日本の投資ファンドがホーチミン市内の
Phu Nhuan地区にあるCentre Pointビルを買収した。

工業団地についてはDong Nai省でDonafood Vietnam及びSojitz、Daiwa House、
Kobelco Eco-Solutionという日本の企業3社によって開発された工業団地がある。

不動産サービスでは日本のKMIX CorpがHuy Baoの株式45%を買収し、現地における
高層ビルの建設及びメンテナンス市場に参入した。

先だって東京で開催されたセミナーではSavills VietnamのNeil MacGregor専務も
ベトナムの不動産市場に対する日本投資家の関心を強調した。日本の投資家が100人も
このセミナーに参加したことが、日本のベトナム不動産に対する関心を物語っている。

ITとサービス

他の分野では財政サービスとITが日本企業から注目されている。だが、専門家によると、
これらの分野で投資家はM&Aを選択する。

Quang Trungソフトウェアーパーク開発会社の取締役役員であるChu Tien Dung氏によれば
現在、日本のIT・ソフトウェア開発会社の多くがM&Aでベトナムでの活動の規模を拡大し
ベトナムのソフトウェア会社を買収したがっている。現在、ベトナムのソフトウェア分野に
進出を計画している日本企業の大部分がベトナムの小規模なIT会社を買収したがっており
既存の人材利用を考えている。また、この分野ではM&Aが急増加しており、日本の会社が
投資の決定を出すまでに非常に慎重に検討し、調査期間には2年~3年も費やされた。
現在は調査開始から6ヶ月ほどで決定されることが少なくない。いくつかの日本企業は
現時点で既にベトナムのパートナーを探し始めている。

HSC会社財政担当のNguyen Tat Thang氏はベトナムのIT分野が外国の投資家たちにとって
魅力的になっていると述べた。Thang氏はベトナムのITが発展途上であり、とりわけ
データーベース、銀行、小売、医療等の管理システムが充分に開発されていないと指摘した。
そのため、外国の投資家はM&Aのルートを通じてこのマーケットに参入したがっている。

2011年に7つのベトナム企業(VNG、VMG、Vatgia、VGame、Baokim、CleverAds、
Di Dong Xanh)への投資が行われた。日本のサイバーエージェントは今年の3月上旬に
Tiki.vn通販サイトへの投資を行ったことを発表した。

これと同じように日本の投資家は銀行や財政の分野に投資を促進させている。典型的例は
みずほ銀行によるVietcombankの株式買収である。VCBはみずほに15%の株式を発行し、
投資総額は5万4,380万USDだった。2度目となる今回は日本の銀行がベトナム銀行に
戦略株主として投資した。過去には三井住友銀行がEximbankの株式の15%を買収している。

日本の投資家がM&Aを選んだ理由として、専門家は現在の状況でM&Aを実行する場合は
投資経費を20%節約できるからだとしている。

つまり、日本側のベトナムに対する投資傾向が変化しているのだ。工場を建てて製品を
生産して輸出することが今までの伝統的なやり方だったが、日系企業はベトナム国内市場に
さらなる深みへの参入を果たしている。

専門家は日本の投資家は人口、経済発展、一人当たりの所得等の市場に関する情報によって
市場の状況を判断するとしている。日本の投資家は投資決定を出す前に細部まで調べ上げ、
長期的に発展を続ける見込みがある分野に投資し、現時点の困難解決ではなく将来に向けて
投資を行う。

現在、日系企業が対峙している問題は、自国の市場を飽和状態にしている円高である。

サイゴンエコノミックスタイムズ  2012年4月19日

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