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2009年03月07日

電力分野の株式: 長期的な投資対象と見るべき


電力分野は価格上昇と需要増大が追い風となっている。
ただ、直接的 / 間接的に政府から経費援助を受けている現状を加味すると、
電力分野の株式は長期的な投資対象と考えた方が良い。


3月1日、首相の決定により電力価格が値上がりした。
経済的に困難なこの時点での電力価格値上げは、企業の生産営業活動に影響を与える。

電力価格の値上げが電力会社に大きな利益を与える、と考える投資家が少なくはない。
ただ、Artex証券によると、電力関連分野の株式は投資家にとって長期的な投資対象であるという。

電力消費需要の増加

各関係機関の調査によると、ベトナムの電力消費需要は近年急速に増加している。
電力消費需要は今後も大きく増加すると予想されるため、
電力分野への投資開発意欲は非常に高い。

政府は、電力価格の調整、さらに競争を条件とした電力市場創出を目指し、
各発電所の発電効率を上げ、投資資金、特に外国投資資金を大量に調達することを目指している。

今後、電力消費需要はさらに増加するので、この分野の開発への投資需要大きい。

PPCとVSH

政府が3月1日からの電力価格引き上げを承認した直後の2月16日には、
電力分野の株式はHOSEとHASTCで揃って上昇した。
個別銘柄ではPPCとVSHが多くの投資家の関心を集めた。

Pha Lai火力発電株式会社(PPC)はベトナムで最大の石炭発電所であり、
発電量が年間70.28億Kwh (そのうち59億KWhがEVNに売却される)と、
国家総発電量の10.96%を占める。EVNに対する売却価格は、1Kwh当たり622.5ドンである。

電力価格が1Kwh当たり948.5ドンに上げられることにより、PPCの売上は増加するが、
燃料費用は高い。燃料は主に石炭である。PPCの売却電力単価の50%を占める。
しかし、電力分野に供給される石炭の価格は輸出価格の48%にすぎない。

2008年、世界の石炭価格は最高の133.5USD/1トン(2008年6月27日)から
57.5USD(2009年2月26日)にまで下がった。

従って、2008年の売却単価中の燃料費構成比率は2007年から4%増に留まった。
2007年は、2006年より12%も増加していた。

ベトナム政府の17兆ドンにのぼる総合経済対策により、
PPCは優遇金利により資金調達が可能となるため、2009年中の経費は多少削減できる、

2008年にPPCの利益は円高の影響を受けてマイナス2070億ドンになった。
現在、1円が178ドンに下がったので、2009年にPPCの営業成績は改善する。
負債/総資産比率と負債/資本比率はそれぞれ61.99%と194.6%であり、
電力業界の中で一番高い。

分析結果により、PPCは営業活動が安定的に行われ、償却が大きい。
今年のVND/JPYの為替レートも余り変動しないだろう。

テクニカル分析によると、PPC株の長期的な株価下落傾向は徐々に解消する。
また、PPCの流動性が高いため、投資家はPPC株で、短期間に利益を得ることが可能である。

Pha Lai火力発電株式会社(PPC)

2006年2007年2008年
売上360707338070683881915
燃料費239718426927352798493
償却費627759072186678141238
運転資金167303167312170926
利益979340824353-207728
負債/総資産62,1255,9661,99
負債/資本177,55141,65194,6

Vinh Son Song Hinh発電株式会社(VSH)の利益は
季節要因及び償却費、人件費等の経費にも大きく左右される。
VSHの生産能力は年間6.6億Kwhであり、EVNへの電力販売価格が約580VND/Kwhである。

EVNへの電力売却時、各企業は生産量の5%を市場価格で売却し、
残りの95%を契価格で売却する。2月12日付決定No.21/2009/QĐ-TTgによると、
電力卸売価格が948.2ドン/Kwhに上げられると、今後VSHの売上が増加する。

VSHの経費は償却、人件費、借入金利のみであり、
また燃料費調達価格は余り大きく変動しない。
生産量が増加すれば、収益があがるのである。

VSHは償却用資金が大きく、毎年約1400億ドルである。
この資金は新しい水力発電工場の建設案件に投資される。
VSHの資金借入用の経費が2008年に急速に増加し、2007年より81%増加した。
理由は2008年にVSHが高い金利で資金を借入れざるを得なかったからである。

ただ、公定歩合が7%に下がったことにより、2009年にVSHの資金調達経費が減る。
2008年の利益は2007年より44%増加した。

また、VSHの負債/総資産比率及び負債/資本比率は低いので、財政構造が安定する。

VSH株価の下落傾向はそろそろ終わるかもしれない。

Vinh Son Song Hinh水力発電株式会社(VSH)

2006年2007年2008年
売上436625370162483680
燃料費192796168040177685
償却費11840191324471
運転資金201891539227825
利益270592256841370841
負債/総資産28,6416,88
負債/資本40,4220,53

まとめ

電力分野は発展潜在力が大きい分野と評価される。
ベトナムの電力消費需要は非常に大きい。
ただ、現在、電力卸売価格が管理されているため、
電力会社の売上が急速に増加する可能性は高くない。

従って、電力分野の株式は国債と同様に安定的な投資対象として見たほうが良い。
ただ、電力分野の株式の安定性及び利回りは国債より高いと言える。



企業フォーラム 2009年3月6日

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