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2009年03月19日

GDP成長0.3%? 厳しく見つめる世界経済危機


ベトナムはこの数年間、連続して高い成長率を維持してきたが、
2008年、6.23%に落ちこんだ。
しかし今年、ベトナムの成長率に関してより悲観的な数字が、
世界銀行(WB)、国際金融機構(IMF)、HSBC等
国際信用機関から次々に発表された。


中でもThe Economist (イギリス)所属の
Economist Intelligence Unit (EIU) の発表した数字は、
最もショックを受けるものだった。

EIU東南アジア地域長のJustin Wood 氏が行った
3月16日付の発表によると、
「ベトナムのGDPは2009年0.3%に留まる可能性がある。」
というものだ。
この情報により、ベトナム政府との対外経済会議において、
数多くの議論が噴出したと見られる。
これは世界・ベトナム紙と外務省主催で
「ベトナムの将来的地位」をテーマに、
3月17~18日、ハノイ市で行われた会議である。

Justin Wood氏は、この数字は客観的なものであることを強調した。
経済成長の動力である輸出、投資、消費が、
今年急減することが確実だからだという。

氏は、ベトナムのGDP拡大上限は1.7倍であるため、
アメリカ、EU、日本等主な消費・輸入市場が、
今年52%減少した場合、ベトナムの大打撃を被ると、指摘する。

外国投資についてEIUは、
今年のFDIは全世界で70%減少するとの予測を示した。
ベトナムについて、2009年のFDI実施額は、
2008年の76億ドルから約22億ドルにまで下がるだろう、としている。
これは、ベトナムの輸出製品の生産力を制限することになる。

EIUの報告書は、3月17日午前、ベトナム政府に提出された。

これに関するJustin Wood氏の回答は以下の通り。

Q:ベトナム政府との国際対外経済会議は今年、
 世界経済が悪化している状況の中、行われた。
 2009年、世界経済に対するEIUの予測は、
 他の機関より更に悲観的である。それはなぜか。


A:今年、世界経済が弱体化するのは明白であり、
 その中で、我々は成長率-1.8%と予測しているだけである。

これまでの歴史の中で、最大の信用バブルがはじけたのである。
大国(特にアメリカとイギリス)の経済発展の背景で、
国債の発行額が記録的な数字に達している。

現在我々は、終わった祭りの損害を補償しなくてはならない。
各銀行は会計報告書を検討し、資金を貸控える。
消費者は借金返済に追われ、節約に励まなくてはならない。
リスクに対する恐怖が高まり、金融市場の変動が激しくなっている。

消費者が節約を励行し、銀行が資金貸出しを控えれば、
経済に大きな影響が出る。
アジア等の新興経済地域では、大国の国債ほどではないにしろ、
深刻な被害がでることになる。

アジア地域の輸出に対する需要が低下し、外国投資家が撤退するため、
金融や証券市場で様々な圧力がかかり、資金調達が困難になる。

EIUは今年、ベトナムのGDP成長率を0.3%と予測した。
10年前、東南アジアで起こった通貨危機時の成長率(5%)より低い。
なぜ、今の国際金融危機は、当時の東南アジア金融危機より
ベトナムに大きな影響を与えるのか。

まず、0.3%といっても、実際他のアジア緒国に比べれば、
随分数字である。

例えば、世界経済の成長率がマイナスのほか、
シンガポール -7.2%、台湾 -5.5%、日本 -5.5%と予測している。
今年+成長すると予測しているのはわずか数カ国だ。
中国 6%、インド 5%、インドネシア 1.5%といった具合である。

なぜベトナム経済が後退するか。

(1)輸出需要の急減
ベトナムでは、輸出、特に工業製品の輸出が大きく発展してきた。
しかし今年は、輸出の需要が急減する。
アジア各国はアメリカ、ヨーロッパ、などの消費節約により、
深刻な状況になってくるだろう。

(2)失業率の増加
(1)の影響により失業者が急増、
人々の所得も昨年の高いインフレでかなり減ったため、
個人消費の節約が見込まれる。

(3)投資の急増減
この数年、投資が急速に発展した背景に、
外国直接投資の急増が大きく関わっている。
しかし、国際的な経済衰退により、直接投資活動が急減。
資金に余裕のある外国企業は慎重な検討を重ね、
資金不足の企業が資金調達するための対策を採る必要がある。

その他、輸出用施設の建設に、大量の資金が投資されたため、
今後、新工場の建設計画がかなり減ることが見込まれる。
不動産市場の下落に伴い、投資需要にも大きな影響が出そうだ。

需要の引き上げ対策について、
政府がどんな支援策を実施するのか、まだ明確でない。
政府はこれまでにさまざまな対策を発表したが、
これまでの政策がどのように実施されたか、
支援資金の支出がいくらだったかなどは明らかにされていない。

今回の国際金融危機が、以前の東南アジア金融危機より、
大きな影響を及ぼすことについては、
10年の間でベトナムが国際経済により深く関わりを持つようになり、
10年前に比べ国際的な問題の影響を受けやすくなったため、と言える。

アジア全体については、
1997~1998年の金融危機の中で、
アジアは自分達が発展する道を見つけた。
例えば、1998年アメリカ経済の視聴率は4.2%で、
アジア各国から大量に輸入を行った。
今年、アメリカ経済の成長は-2.5%、
アメリカ市場の輸入需要は、当然低下している。

Q:2008年4月、The Economistは、
 「ベトナム:アジアの素晴らしい発見」という記事の中で、
 ベトナム経済を積極的に評価している。
  The Economistはその楽観的な評価に対してどのように考えるか。


A:短期的な観点からは、ベトナムは引き続き厳しい経済状況に
 さらされるだろうし、しばらくは低い成長率に留まると予測している。
 しかし、中長期的に見れば、
 外国投資家にとって、魅力的な投資先であることに変りはない。

ベトナムが今後引続き工業化事業を実施していけば、
インフラ建設を促進、給与も上がり、生活は裕福に、
経済も改善されるだろう。
なによりベトナムには若い人材が多い。
これらの要素は、経済が今後好転していくことを期待する
大きな要因である。

一方で、明るい未来を確保できるかどうかは、
政府の対策に大きく左右される。
政府が正しい政策を行えば、安定した営業発展のインフラを作ることができる。
経済発展には、教育システムの改善、インフラ整備、
汚職防止、国営企業の組織改善等、課題はまだまだ山積している。



Sanotc.com 2009年3月18日

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