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2008年11月24日

公務員の退職増加現象


日本で「公務員」といえば、安定職の代名詞である。
世界的に見ても、程度の差こそあれ
公務員とは、一定の魅力を持った業種であることは間違いない。
それは、ベトナムでも同じこと。
公務員採用試験は難関を極め、よほど優秀でなければ合格できない。

しかし今、ベトナムでは公務員が一気に退職する
という現象が起きている。
公式の統計結果によると、この5年間で
行政の0.8%にあたる中央・地方公務員のうち、
1万6千人が退職している。
最も多かった地方はホーチミン市で、
その数は、全国の退職者の3分の1にあたる
6,500人に上った。

全体の在職者数から見れば、その数は微々たるものである。
しかし問題なのは、彼らの多くが経験豊富で
有能な人材である、ということだ。

つまり、優秀な人材が、民間企業に流出する傾向が
近年強まってきているのである。

より良い労働環境を求めて

退職理由で多いのは、2つ。

①給与面の問題
公務員の場合、並みの月給では生活費をまかなうのがやっとで、
貯蓄もままならない、という実情がある。
特に教育や医療の現場では、民間企業に転職したとたん、
給料が何倍にも跳ね上がるため、民間企業への誘惑は増すばかりだ。
老後の生活を見据え、より魅力的な申し出のある企業に
惹かれるのは、当然である。

②根強い派閥意識
中には、昇進のチャンスを見出せずに退職した者も多い。
公務員の昇進は、まだまだ経歴重視の傾向が強い。
派閥意識も強く、優秀な人材がないがしろにされることもしばしばだ。

加えて、ベトナムの公務員で特に問題なのは、
支持系統の不明瞭さが原因で起こる、
責任転嫁が非常に多いことである。
これは、労働者のやる気をなくさせる要因のひとつとなっている。
職場において、上司と部下がいるのは
当たり前のことである。
しかし、現場ではさまざまな要因によって、
支持系統がぶれることがある。

例えば、ある機関では、理事長が法的に
決定権を持っていない場合がある。
また、法的な拘束力を持たない上司が、
命令を下す場合もある。
支持系統が不明瞭なときに、従業員がミスをすれば、
指示に従っただけといえども、
責任を負わされるケースもある。
一方では、賞賛に値する結果を出しても、
無視されてしまうこともある。

この問題に関して、
「退職理由は、どれも個人的なものであり、
 公務員が、まだ多くの人々にとって
 魅力的な仕事であることに変りはない。」
という意見もある。
しかし、待遇・昇降格・賞罰の仕組みに関して
改善すべき点が多いのは、事実である。

ベトナムの公務員は、現在全国で170万人、
人口約8,500万人に対してであるから、
国民の約50人に1人が公務員ということになる。

また、エリート官僚の縁故者がかなりの割合を占めている、ということも
古い体質から抜け出せない大きな要因だ。
給与面にせよ、派閥意識にせよ
この「余計な人数」を削減できれば解決できる問題ではある。
しかし、そこは理論武装の通用しない国、ベトナム。
分かっていても、なかなか解決に向かうことができないのが現状だ。

このままでは公務員が、民間企業で活躍できない人材の
漂流地となってしまいかねない。
そうなれば、ベトナム公務員は、
一層深刻な人材不足に直面することになるだろう。
(タン)


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