« 越証券会社 淘汰の時代へ | メイン | 食品安全問題 (2)国民の安全意識を底上げせよ »

2008年12月08日

食品安全問題 (1)高まる国民の関心と政府の対応遅れ


産地偽装や事故米、中国輸入食品の毒物混入など、
日本でも、この一年は
食の安全を問われることが多かった。
ベトナムでもここ数年、食に対する安全意識が高まる一方で、
それを脅かす事件が多発している。

食品安全に関する事件

ベトナムではこの2年で、
いくつかの食品関連事件が発生している。
最も事態が深刻だったのは、
発ガン性物質3-MPCDがしょうゆに混入した事件、
中毒を引き起こすマムトムや、メラミンがミルクに混入した事件、
などだ。もちろん、鳥インフルエンザも深刻な問題ではある。
これらの事件は、ベトナムの食卓に大きな影響を与えた。
なんせ、しょうゆやマムトムといった調味料は、
郷土料理の味付けには欠かせないものだったからだ。

国民は敏感に反応

特に南部地域では、毎日の料理には欠かせないしょうゆでも、
多くの人が、すぐにその使用をやめた。
もちろん、不安を抱えつつ使う者もいたが、
使用中止のほうが圧倒的多数だった。

この事件は、生活水準が高ければ高いほど、
食に対する安全意識も高くなっていくことを浮き彫りにした。
また、インターネットなどのすばやい情報伝達によって、
人々の恐怖は倍になっていった。
結果として、しょうゆ・マムトムの売上は激減した。

政府の対応遅れ 事態深刻化の要因

こうした国民の反応に対し、
政府の対応は鈍く、またずさんであった。
衛生局は事件前たいした品質チェックもしていなかった。
事件後初めて調査に乗り出したが、
そんな準備不足の調査結果は、
不明瞭で、結論もあいまい、誤報も多かった。
結局、この時点では国民の不安を煽るだけとなってしまった。

たとえば日本であれば、食品管理の場合、
人体に影響がなくても、
毒性物質が基準値を超えたことが発覚した時点で、
管理機関の発表があり、報道される。
一方、ベトナムでは、事件となってから報道され、
国民に散々知れ渡ってから、
ようやくその圧力に従って、調査に着手することが多い。

ベトナムにも、食品安全を担う衛生局という機関は存在している。
しかし大きな食品事件が起きない限り、
その存在は忘れられがちだ。
ホームページを見ても、情報は少なく、更新もまばらな状態である。
しかし、衛生局が能動的な働きかけを行わなければ、
国民の食品安全は、常に危険にさらされることになる。

いくら法律だけ立派に整備されていても、
実行されなければ意味がない。
中には人材や設備の不足を、
調査不備の理由にされることがあるが、
高まる国民の要求を満たすためには、
そんな責任逃れをしている場合ではない。

自給自足の時代に戻る?

現在、野菜などの危険性について、
毎日のように報道されている。
誰もが危険回避の道を模索しているが、
意見はひとによってさまざまだ。

農薬が使われていなければ新鮮でなくてもいい、という人がいれば、
絶対に信用できる店でしか購入しないという人もいる。
自給自足を考える人もいる。
そんなニーズに応えるべく、
種や、土、農具の販売に力を入れる店も出てきた。
単なる趣味だったはずの家庭菜園が、
安全確保のための行為になりつつもあるのだ。

当然、コスト、時間、手間などの理由で、
流行することはないだろうが、
何をすれば食の安全が得られるのか、
業者の良心に頼るのか、それとも、政府の支援か、
ベトナムの迷走は続く。

(タン)


« 越証券会社 淘汰の時代へ | メイン | 食品安全問題 (2)国民の安全意識を底上げせよ »

    ・本資料に記載された情報の正確性・安全性を保証するものではなく、
     万が一、本資料に記載された情報に基づいて
     皆さまに何らかの不利益をもたらすようなことがあっても 、一切の責任を負いません。
    ・本資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、
     投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。
    ・本資料の全部または一部を無断で複写・複製することを禁じます。

運営会社編集方針お問い合わせプライバシーポリシー