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2009年02月17日

ベトナム教育と人材の問題点及び提言 晴耕雨読


トレンドの変化

 08年初、行き先を新興国へと求めていた投資マネーは、
 世界経済停滞と共にその紐が硬くなったばかりではなく、
 各地域を保護貿易へと駆り立てる。

 ”かつて”の投資ブームも恩恵ではなく、
 代償を払うタイミングにきたようだ。


様々な問題の露呈

 ここ数年のベトナム高成長には、
 安い労働力を求めた輸出志向製造業が大きく寄与した。

 国家成長戦略の欠如やインフラ未整備、汚職体質等、
 高成長期には問題視されなかった様々な問題点が、
 現在になって露呈、企業撤退の一因となりつつある。

 国家戦略の未整備やインフラ未整備は言うに及ばず。
 汚職体質は、対越ODA凍結といった形で、
 日越国家問題にまで発展している。

 慢性的な貿易赤字国であるベトナムにとって、
 ODA凍結は、貿易収支だけにとどまらず、
 各方面への影響が懸念される。


直接投資受入れの一方で

 ベトナム政府は、直接投資受入れ促進を図っているが、
 08年上旬の承認案件は、不動産や観光関連が多く、
 現経済環境化では、その実施に大きく影響が出ることは避けられない。
 その一方で、09年ベトナム人従業員強制保険加入等により、
 実質最低賃金20%超の大幅上昇により、
 ベトナム成長を牽引していた”安い労働力”も
 魅力的を失いつつある。


晴耕雨読

 さて、現経済環境化では、どんな努力も結果に結びつきにくい。
 このタイミングだからこそ”教育”ということで、
 高い教育水準といわれるベトナム人材と
 その教育環境に関してまとめてみたい。


1、国家としての人材戦略

 (1) ビジョンの明確化
  ・どんな国家にしたいのか、そのためには、どんな人材が必要で、
   そのための教育は、教師はどうするべきか。
   ベトナム政府は国家としての指針を明確にすべきである。

 (2) 他国に学ぶ
  ・日本では、明治期”富国強兵殖産工業”を進めてゆく中で、
   中長期的な国家戦略の立案し、実行した。
   その中で重要な地位を占めたのが、教育であった。
   1、海外から技術者を呼び、高等教育を施す
   2、政府主導で富国を進めることが必要であるとの見地より、
     東京帝国大学を設置。官僚の育成に力を入れた。
   3、優良な人材育成には、教育が不可欠と、
     各都道府県に教師養成所(師範学校)を設置。
     教育者の育成を進めた。
    こういったことを学んで人材戦略を立案し、実行していただきたい。


2、教育とその環境

 (3) カリキュラム
  ・ベトナム教育システムは完全な暗記型である。
   問題解決型教育へ転換を図ることが、
   今後、更なる人材排出につながる。

 (4) 教員人材
  ・教職員給与は安く、良い教員は定着できない水準である。
  ・旧体制下の教育を受けた教師
   特に技術系は、高等水準にあるとは言いがたく、
   企業での再教育は不可欠である。
   外国から教師の受け入れは不可欠であろう。
 

3、意識改革

 (5) 外資系企業に人材教育投資をさせる意識を!
  ・高い人材流動率≠企業人材教育投資
    高経済成長化、人材不足は著しく、
    人材需給環境は圧倒意的に労働者有利である。
    しかしながら、長く勤めぬ人材に
    企業は先行投資(教育)しないことを念頭に入れ
    ベトナム人労働者は働くべきである。

 (6) 高いプライド
  ・高いプライドは、新たな教育を受けさせる意識を持たず、
   大きな成長阻害要因である。

 (7) 自己改革型人材
  ・教育の弊害であろうか。自らで問題点を発見し、
   解決して行く人材が圧倒的に不足している。
   工場労働者だけではなく、オフィスワーカーも同様である。


更なる発展のために

 しばし停滞する感のあるベトナムであるが、
 発展が止まることはありえない。
 
 国家は、個人に自発的な成長を促す仕組みづくりを。
 個人は、どんな環境下にあっても自分の責任を、自覚する。

 たとえば、国ができること
  1、国民の祝日=有給休暇(労働法)の廃止
    労働者を保護することは、一時的な保護にしか過ぎず、
    国際競争力強化することに決してつながらない。
  2、成果主義の導入
    成果主義を導入することで、労働者の自発的な成長を促すこと。
    これこそがベトナムに無い、国際競争力を持った企業を創出することになり、
    それこそが賃金を上昇させることにつながる。

 たとえば、個人が意識すること   
  1、給与は成果に基づき、必ず上がってゆくものではないことの自覚。
  2、”ポジションを得る=お金を得る”では無い。
  

現状のベトナムと日本を見るに、ベトナムが明らかに勝る要素を見つけることは難しい。
教育は”国家百年の計”とはよく言われるが、
ベトナムの中長期的な成長のために、こんな経済状況だからこそ、晴耕雨読。
教育に関して考える、そんな国であってほしい。


大木

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