ベトナム経済 危機とチャンス
2007年末まで、ベトナムはアジアの「星」であった。
しかし、最近のマイナス要因から、
投資業界から心配を受けている。
ベトナムは、外国人投資家から脚光を浴びた。
しかしこの数ヶ月のベトナムは、
貿易赤字、インフレの急速な増加、
ベトナムドンの下落、
証券市場は連続的に下落した。
状況悪化に伴い、ベトナム政府は5月に、
今年の成長目標を8.5%から7%に下げた。
アメリカの信用評価会社-
Standard and Poor’s 、Fitch Ratingsは
マクロ経済発展展望を、安定レベルから消極レベルに下げた。
以下は、ベトナム経済の現状と、
証券市場、不動産市場の内在要素について分析している。
インフレ上昇
国内需要の増加、投資資金の増加、
食糧、エネルギーの価格高騰は、
インフレに圧力をかけている。
2008年3月中旬から7月まで、
ベトナムのインフレは、前年同期と比べ、
3月までに19.4%、5月までに25.2%、
7月までに27%上昇した。
物価コントロールのため、ベトナム政府と国家銀行は
国家予算の支出を切り下げ、
銀行金利を今年に入ってから3回上げ、
各商業銀行に、預金準備率の引き上げを要請した。
ただ、これらの対策が経済全体に効果をもたらすには、
もう少し時間がかかりそうである。
さらに、先日ガソリン小売価格が30%上げられたので、
インフレ上昇が加速する可能性が出てきた。
最近では、消費者物価が今年中に
+25%上昇するという予想も出ている。
貿易赤字
輸入商品の価格上昇、経費の急増により、
2008年年初5ヶ月の輸出成長は、
前年同期比+70%であった。
7月の貿易赤字は150億ドルで、昨年より大きい。
しかし、外国直接投資(FDI)、発展支援(ODA)、
ベトナム人居留民の送金が、多少この状況を改善している。
ベトナム政府は、国家予算の支出切り下げのため、
いくつかの案件実施を延期している。
これらが一部効果として表れ、貿易赤字は毎月減ってはいる。
6月の赤字は13億ドルで、5月の38.5億ドルからかなり下がった。
7月の赤字はさらに7億ドルと予想しているものの、
政府は年末の時点で、今年の貿易赤字は188億ドルに上ると
予想していた。
ベトナムドン安
インフレ上昇と貿易赤字の増大は、
1997年タイの経済危機を髣髴とさせ、
ベトナムドン切り下げの懸念が出ている。
厳重に管理されたてはいるものの、
ベトナムドンは年初より5%下がっている(1998年を抜き最安値)。
ベトナムドン安は、輸入製品の消費需要と
輸出経費を減少させるため、貿易赤字を下げる。
しかし、輸出製品の価格が上昇すると、インフレ上昇となり、
貿易赤字が長期化すると、外貨準備資金が減り、
政府に対する信用を下げるため、
人々が外貨、金、その他の資産を買う動きは続くことになる。
証券市場 下落
証券市場は2008年6月、昨年3月の時点より67%下落し、
取引量も前年同期より95%減少した。
証券市場は2006年~2007年、ブームのように発展したが、
政府が、証券投資に対する
貸出厳格化の政策が出された後、急激に下落した。
ハノイ証券取引所とホーチミン証券取引センターの時価総額は、
2007年3月のGDPの40%以上を占めるが、
2008年6月まででは17%に留まる。
国家銀行がベトナムドンと銀行金利の監査を行うと、
証券市場はさらに酷くなった。
不動産市場
政府が金融市場監査のため、次々と政策を実施したため、
資金調達はさらに困難になった。
不動産はインフレ上昇の中で、
特に株価急落の時でなどは、
最も確保しやすい資産である。
しかし2月の、不動産への信用貸出管理の厳正化から、
不動産価格も急激に下がるようになった。
同時に、インフレ上昇、株価低下により、
人々の財布の紐がきつく締められてしまった。
正月の後、不動産価格は徐々に安定し、
それ以前よりも下がってきた。
不動産市場は固定期に入ってきた可能性が高い。
価格が下がり続けるため、中期投資家にとっては
資産の魅力が段々なくなることになる。
昨年末より、B、Cランクのオフィスの賃貸需要が
段々減ってきている。
B、Cオフィスを希望するのは、通常中小企業ある。
経済状況が不安定なため、
多くの会社が、オフィス家賃を含む
様々な経費を減少しなくてはならず、
多くの国営会社は、中心部から離れたところで、
自社のオフィスビルを建設している。
こうすれば、オフィスを借りる必要がなくなり、
家賃の不安定を回避することができるのだ。
しかし、Aランクのオフィス家賃は高騰している。
需要が高い割りに、供給が制限されているためだ。
2007年、Aランクの家賃は月1平米当たり35ドルであったが、
現在65ドル~70ドルになっている。
2010年までには、ハノイ市、ホーチミン市に
Aランクのオフィスビルが19件建設される予定
(Kumho Asiana Plaza、M&C Tower等)なので、
状況も安定してくる見込み。
しかし、経済状況が不安定になると、
各社とも、作業用スペースを減らすため、
賃貸オフィス市場が徐々に悪化する。
ベトナム、外国人投資家が、
ベトナム経済に対する信用を下げると、
Aランクを含むオフィス全体の需要も減少することになる。
近年ベトナムは、服飾、靴、電子製品の生産会社にとって
魅力的な投資国となっている。
外資系会社は、賃金安価、政治の安定、
外国人投資家に対する優遇政策、交通の便などを
メリットとして上げている。
2007年8月末まで、ベトナム国内には150の工業団地があり、
シンガポール、台湾、韓国、
日本、中国の製造企業が集められている。
工業生産用スペースの需要が高まり、
労働者は賃上げを求める。
インフレ上昇は消費を下げ、
多くの労働者はストライキを行って、さらなる賃上げを要求する。
現在、工場労働者は最低基準値以下の給料を貰っている。
インフレ上昇が続き、ストライキが続くと、
ベトナムは自らの強みを失うことになりかねない。
小売市場
ベトナムの小売市場は未発達で、
ショッピングセンターはまだ少ない。
競争が少ないことは、外国人投資家にとって魅力的である。
若い人口も増えていて、2008年年初には、
A.T.Kearney研究会社の「魅力的な小売市場リスト」の中で、
インドを抜きNo.1になった。
A.T Kearnyは経済、政治のリスク、一人当たりの収入、
市場の魅力等について、各国を評価している。
しかし、最近では、多くの人が証券投資のために
借金や、家を売利に出したりした。
インフレや証券市場の下落により、
多くの人が負い目を抱いている。
したがって短期間では、ベトナム小売市場について
あまり楽観的に考えることはできない。
市場の発展は、政府がどのように経済を回復させるかにかかっている。
不動産市場のチャンス
全ての危機はチャンスを招く。
流動性がないこと、価格が下げることは、
外国人投資家にとって良い投資チャンスとなる。
ベトナム不動産会社は、銀行の信用対策により、
資金源問題に直面している。
多くの案件は、資金不足のため中断されている。
その他にも、銀行債務に関する圧力を受ける数社は、
実際より低い価格で資産を売却せざるを得ない。
したがって、昨年と比べ、
現在、投資案件はかなり探しやすくなっている。
観光分野も投資家業界にとって魅力的である。
ベトナム観光の強みは、豊富な文化遺産と、
長く美しい海岸線、海の生態が豊かであることだ。
ただ、専門家不足から、強みを生かし切れていない。
したがって、投資家は観光客集めのため、
歴史、文化、自然環境を融合させた
観光形式の開発に協力している。
同時に、生産は経済促進の重要な要素である。
ベトナムは、他国と比べても様々な強みを持っている。
低コスト、人材の質の高さ、交通の便、地理条件の良さなどだ。
したがって、外資系製造会社は、
まだベトナムに注目している。
大きな製造センターとなる夢を実現するため、
政府は、製造分野を安定的発展のために
精一杯努力すると共に、
生産要員を充分に供給するために、インフレを抑制する。
結論
ベトナムは世界の中でも、大きな競争力を持っている。
WTOの加盟や、国内市場の急速発展により、
長期的に見れば、外国人投資家にとって
魅力的な投資先であると言える。
経済状況の悪化に関わらず、
長期的には、基本の要素がよく維持できている。
経済状況のコントロールを取り戻せば、
ベトナムはまた安定し、投資業界の信用も回復するだろう。
現状では、充分な資金力を持ち、
不動産市場へ、長期的に投資する投資家は、
今後大きな利益を作れるだろう。
Sanotc.com 2008年8月1日


