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2010年07月17日

越国営公社倒産 政府措置は世界的には例外


今回のVinashin倒産に対する、政府の干渉の仕方、問題解決法は、
基本的なベトナムの社会主義の経済管理に対する考え方が、
大きく現れている。


ベトナム国内に限らず、各国マスメディア、政治家、経済学者などが、
ベトナム造船公社-Vinashinグループの倒産に高い関心を示している。
大規模国営企業の倒産は世界的に見ればままあることであり、
特に銀行分野での倒産は現地だけでなく、世界の金融市場にも影響を与えてきた。
企業の倒産に対して採る応急措置も、各国様々である。
しかし、ベトナムの Vinashin倒産の原因と、
その対処法は世界的に見ても例外といえるのではないだろうか。

Vinashinの全景

Vinashinは首相決定No. 103/QD - TTg 、及び
決定No. 104 QD – TTgに基づき設立された100%国営会社。
営業分野は多岐にわたり、その構造は、
直属公社 8社、直属の大企業 7社、子会社 200社から成る。
各社、企業法に基づき活動し、
取締役会、監査委員会、代表取締役社長の部署が置かれている。
Vinashinの党書記兼会長兼社長はPham Thanh Binh氏。

7月上旬の統計によると、
Vinashinの総資産は90兆VND。うち、9兆VNDが株主資本。
現時点での借金は80兆VND以上で、
(40億USD相当/国の借金は600億USD)
この数字は、昨年の経済衰退期の需要引上げ予算の4倍、
全国の貧困削減事業に対する国家資金の2~3倍に及ぶ。
借金が株主資本の10倍にも膨らんでいるのだ。
すでに5,000人の労働者が失業し、
未払い給与及び社会保険だけでも2,340億VNDに上る。

倒産の原因は

Vinashinの倒産のきっかけは、
政府が国債発行を通じ、外国商業銀行、ベトナム商業銀行、
投資開発銀行、Vietcombank等の機関から7.5億USDを調達した。
この負債の返済が困難になったことから、
政府決定No. 926/QD-TTg が発行され、
Vinashinを再構成、子会社12社を石油グループ(PVN)、
ベトナム海運公社(Vinalines)にそれぞれ移転させることが決定された。
Vinashinは2007年1月から政府に追加資本を供給されていた。
政府はVinashinに対し、緊急案件の実施、返済期限の迫った負債、
実施中の案件に対する資金調達のため、
引き続き国債発行を行うことを約束ている。

Vinashin倒産の原因とその責任については、幾つかの事象が挙げられている。
(1)Vinashinが政府への企業状況の報告に忠実さを欠いたこと。
(2)子会社が多すぎたこと。
(3)生産力が不十分であったこと、造船分野への投資が過度であったこと。
(4)プロジェクトの立案、入札、認可、入札に関する規定に重大な違反が見つかったこと。
(5)負債の清算能力を失ったこと。
(6)会長が血縁者を重要なポストに就けたことなど...

政府分析によると、業績赤字の原因は、
複数分野への投資を行ったうえに、案件の管理体制が弱く、
資金の流れが明確でないことが挙げられるという。
Vinashin役員は責任を追及され、違反への厳しい対処を求められた。
7月9日午前、政府捜査委員会はVinashinへの捜査開始を発表した。

原因は上記以外にも、多岐に渡っており、
ベトナム造船工業の発展戦略を明確にしなかったこと、
造船工業の発展に対して力を入れすぎたため、管理能力が追いつかなかったこと、
また、企業活動が監査されていないこと
経済学者の意見を聞き入れなかったこと、
なども倒産の一因としてあげられている。
Vinashinは資産全体を再検討すべき段階となり、
規定、手続き、資本に関する問題が発生している案件に対しては、
政府の速やかな対処が求められている。

国営企業の国家依存体質

社会主義経済の観点は、国営企業が政府から直接管理を受けることである。
原則として、政治家と経済管理者が、国家計画を達成する責任を負い、
経済政治の任務を実行するための、主導的な役割を担う。
つまり、政府が資金と指示を出し、貸出額も決定し、
企業が倒産する場合は、企業の役員と職員の責任を追及することになる。
これはVinashinで100%体現されている。

市場経済で活動する企業(官民含む)は、国から独立した形で存在しており、
政府利益ではなく、自社の利益のために設立されている。
企業の設立、解体、倒産は、人間の生老病死と同様であると言える。
企業は生き残りのため、激しい競争にさらされる。
弱ければ、より強い企業に取って代わられる。
国の干渉を受け、責任を押し付ける企業などはない。

実際、ドイツでは毎年国内企業400万社のうち、
半分~2/3が倒産しているが、国の庇護を受けた企業は一社もない。
ただ、その代わり、新設された企業も数多あるのだ。

企業は企業法に基づき、2種類に分けられる。
(1)民間企業
これは、規模が小さく、家庭内企業とも言える。
オーナーは一人で、企業の資産と活動に対する責任は、全てオーナーが負う。
倒産することは、オーナーの破産と同様の意味となる。
(2)法人
株式会社、有限会社のこと。
これらの企業はオーナーと完全に独立しており、
倒産の際も、自己資産の範囲内で責任を負う。
企業の倒産がオーナーの企業外の資産とは関係しない。

国営企業や国有資金関係企業は(2)の種類となる。
国営企業は、国から独立して活動を行う。
個人の民間企業、または社会主義経済で設立された国営企業とも違う。
その場合、企業に対する国家株主の役割は取締役会への参加となる。
他の企業と同様、社長は外部で採用し、法律的には責任を負わない。

Vinashinは市場経済の中で設立されても、
社会主義経済の管理体制で運営されてきた。
Vinashinは、独自に経済市場に合わせた活動を運営し、利益を作ろうとしても、
実際は、政府の管理体制下で運営するため、
赤字・黒字・倒産が全ては国の責任となってしまう。

通常企業が利益を出せば、その利益は企業に還元される。
しかし、Vinashinは企業業績に関して、法律的な責任を負わないため、
当然、役員と役員関係者の利益のために運営されることになる。

ドイツの法律に基づいてVinashin倒産に当たった場合、
社長は即刻解雇となり、自己資産の増減を真っ先に捜査されることになる。
これは世界的には一般的な処理法であるものの、ベトナムでは通用しない。
ベトナムの場合、政府がVinashinの活動に対して責任を負うのだ。

また、政府捜査委員会は、政府管理機関の活動に関する違反や、
責任に対してしか捜査を行わず、
付加価値税や利益税の納入だけを捜査する。
現時点で政府は、Vinashinの貸借状況を把握できていないため、
捜査委員会の活動はまだ完了しない。
今後の処分は、捜査委員会の発表を待ってからである。

いずれにせよ、Vinashinは設立当初から矛盾を抱えていたため、
今回の結果は当然のことといえるのである。



Sanotc.com  2010年7月16日

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