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2011年06月06日

東アジアの自動車産業とベトナム


ベトナム自動車産業は20年前に開発されたが、
未だ外国投資に完全に依存している。
ベトナムは、自動車関係市場をオープンするという
WTO加盟時の公約を履行するためにも、
今後、ベトナム自動車産業を維持できるか、という
大きな課題を持っている。


ベトナム自動車産業は、以前から、輸入を制限するための
課税制度と非課税制度で保護されていた。
ただ、実際には、これらの保護政策は、ベトナム民間企業の
活動を支えておらず、逆に外国投資家を支えている。


現地でも劣勢

ここ近年、アジアでの自動車産業の競争が幅広く深くなっている。
そのため、ベトナムは、適宜対策を施して、競争力を高め、
自動車や自動車部品の現地企業を中心に、
自動車産業を開発していかなければ、
自由市場で水のように流れてしまう。

中国は、2009年に日本を超えて世界で最大の
自動車製造国になった(年間1400万台)。
タイも年間100万台近くを製造している。
中国国内の売上は、連続して増加し、2010年には
1800万台となって、世界で一位になった。
これに対し、ベトナムの生産能力は年間約10万台となっている。

他にも、ベトナムの最大生産能力を有する自動車工場は
トヨタの工場であるが、年間生産能力は2万台しかない。
この能力は近隣国の中国と比較すると大幅に劣る
(トヨタは、中国で年間18万台と年間17万台の二つの工場を持ち、
今後、年間10万台の生産能力を有する新工場を整備する予定)。
タイでは、年間63台の生産能力を有するトヨタの工場3つある。
今年には、この生産能力を70万台に上げる予定である。

このように、生産能力の差が非常に大きいため、
ベトナムは、自動車取引市場を自由化にすると、
中国やタイとの競争がどうなるか、想像できるだろう。
また、AFTA協定によると、2008年末より
自動車部品、バイク部品に対する輸入税率が5%以下に減らされる。
他方、CAFTA 協定(中国とアセアン間の取引自由化協定)によると、
ベトナムは2010年1月から自動車部品とバイク部品の輸入税を減らし、
2015年まで、これらの商品に対する輸入税率を5%以下に下げる。

取引自由化協定の影響により、2006年より
タイからの自動車部品輸入額は連続的に増加した。
2000年から、中国からの自動車部品輸入額が
タイとほぼ同額になっている。
近隣国からの輸入が急増したことが、ベトナム国内の
自動車部品産業に大きく影響を与えた。
特に、中国からの輸入品は、格安な物が多く、多様なため、
ベトナム企業の製品と比較される。

外国輸入品との競争が激しくなっているとともに、
外国自動車製造産業は徐々に弱まっている。
近い将来には、外国の輸入車に対する課税制度の適用がなくなり、
製造業は、部品供給源が豊富である近隣国に移る可能性がかなり高い。
また、自動車製造、生産規模が大きければ大きいほど、
経費を節約することができる。

自動車輸入制限に関する商工省の規定No.20/2011-TT BCTが
追加発行されなくても、外国自動車会社と競争できる
ベトナム民間企業はないだろう。

外国自動車産業は、ベトナムから完全には撤退しないが、
労働人材の利用及び地域内の販売ネットワークを活用するために
生産活動の規模を適切に調整する。
ベトナムで既に整備された施設を利用し、
現地販売ネットワークを拡大する。
このように、自動車産業、製造産業、販売、部品調達等の活動は、
全て外国企業が動かすことになる。

そうなると、どのようにしてベトナム自動車産業や
自動車部品産業を育成することができるか、
という問題が出てくる。
これには、ベトナム自動車産業開発の失敗を
参考にする必要がある。


ベトナム自動車産業開発の失敗要因は

1. ベトナムは数十年前から自動車産業の開発を重視してきたたが、
なぜ効果的に開発できないのか。

自動車産業を始めとする、ベトナム工業分野が
あまり発展できない原因は、工業政策が「経済計画」的であり、
「要請があれば対応」の形で支援対策が実施されているためである。

「平和のための原子力応用戦略」、「ベトナム婦人進歩のための
国家戦略」等の目的を含まれる、社会経済開発戦略は、
全ての分野が細部まで開発計画を立てられている。
例えば、2020年まで何トンの鉄を生産できるか、
いくつのバイク・自動車のエンジンを製造できるか、
という内容まで掲載されている。
これらの目標を達成するために
企業(主に国営企業)まで役割を分担されている。

この計画を実施するために、特定の支援対策を
適用することが求められる。
ただ、これらの目標は、主観的かつ具体的に数字で計算され、
参加者も確定されているため、政府の支援は
「要請があれば対応」という方法で実施されるだろう。
企業活動を担当する公的機関、工業団地、
企業協会を管理する公的機関は、政府の優遇措置要請を考え、
管理権限を拡大することを望む。
政府の優遇装置を得られた後、どんな企業に託すか、
判断する権限がある。
ただ、この優遇措置を得られる企業が多くはない。
今まで、多くの企業活動支援機関が、
様々な形で、中央レベルから地方レベルまで設立されてきたが、
企業の活動を支援できる機関はゼロだ。

2. 現地自動車産業及び現地自動車部品産業で
ベトナムの立場はまだ存続しているか。

地域の労働人材の配置が急速に変動しているため、
ベトナム自動車産業は、自らの立場を決めるのは難しいだろう。
ただ、自動車部品産業(裾野産業)は、今でも
東アジア自動車産業から、最後のチャンスを与えられている。
自動車と部品を「組み立て産業」と「裾野産業」に分けると、
ベトナム裾野産業がまだ開発できない理由は、
組み立て産業がまだ発展しておらず、
販売先がまだ制限されていることである。
逆に、組み立て産業の発展がなぜ制限されるのかを分析すると、
現地市場の規模がまだ小さ過ぎること
(所得が低いため購入能力が弱い)と、現地の裾野産業が
弱すぎて、現地で部品供給を調整できないことである。
この様な分析を見ると、自動車産業の抜け道はない。

ただ、実際、小規模の日本自動車部品製造会社が、
ベトナムに参入し(WTO加盟後)、活動している。
販売先は、ベトナムにある日本企業であり、
ベトナムの近隣国に輸出もしている。
これらの企業は、資材が完全に輸入のため、
競争能力は制限されるが、新しいチャンスを利用している。
小規模の企業が日本で活動する場合は、
ホンダ、ヤマハ、キャノン等の大企業と接することは
非常に難しいが、ベトナムに投資する場合は、
これらの大手製造業の部品調達ネットワークに
入ることができる。

この実際の状況を見ると、ベトナム裾野産業は、
外国の小規模の部品生産会社にとって
大きなチャンスである。
製造業の弱みや基本資材の不足は、
裾野産業の発展にとって難題ではない。



サイゴンエコノミックスタイムズ  2011年6月6日

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