« 越企業 海外に積極投資 | メイン | 2010年 世界のFDI調達状況 »

2011年07月25日

国内電子機器製造 開発発展のめど立たず


ベトナム電化製造産業協会によると、
近年、ベトナム電子機器製造分野では数十億USDという
大規模な投資案件が実施されている。


電子機器製品製造技術については、
外国企業は利益にのみ注目し、
国内企業は技術面でまだまだ弱さがあるため、
「Made in Vietnam」製品は中々出回らない状況となっている。

外国企業続々参入も、国内技術の工場は…

ベトナムのWTO加盟直後、
Intelグループは投資規模を6億から10億USDに増資、
日本のNidecグループもBinh Duong省で
DVD、VCD、カメラ等の超小型モーターの製造工場に10億USDを出資した。

台湾のFoxconnグループもベトナムへの投資額50億USDのうち、
電子機器部品製造分野への投資額が約10億USDを占める。
他にも日本のMeikomグループは、
Ha Tay省での電子機器部品製造工場に
3億USDを投資することを決定している。

その前、2008年、韓国のSamsungは、
Bac Ninh省で携帯電話製造工場に6.7億USDを投資している。
先日、Bac Ninh省工業団地管理委員会は、
Samsung Complexに対し新投資許可を発給、
特別な優遇措置も追加された。
これを受けて、投資規模は現在の6.7億USDから
15億USDへ増資されることになる。
この増資が完了すれば、
Samsungはベトナムの電子機器製造分野で最大の投資企業となる。

年初Nokiaは、VSIP Bac Ninh有限会社との間で
長期土地借用合意書を締結、
この先、Bac Ninh省で投資規模2.8億USDの
携帯電話製造工場を建設する予定である。

これまでベトナムは、Canon、Fujitsu等の
世界の先端技術を持つメーカーの工場を置き、
印刷機、コピー機等の組立を主力に置いてきた。
ベトナムは電子機器製造分野において、
外国投資資金を大きく調達していると言える。

Tran Quang Hung-ベトナム電子機器製造産業協会会長によると、
電子機器部品製造工場は現在、
中国から東南アジア地域に移転する傾向が高まっているという。

ベトナムはそうした傾向に応えるための土地が沢山あり、
賃金の安さも評価されている。
また、この分野はハイテク分野と位置付けられているため、
投資する場合、特別措置を受けられる。
中国やマレーシア等では、
賃金と土地借用料が高騰してきているという。

外国企業がベトナム進出することは、
国内電子機器製造産業の開発にとってチャンスであるが、
現在までに、国内技術の向上というような、
目に見える成果は顕れていない。

外国企業は積極的にベトナムに投資するものの、
土地と安価な労働者を利用するだけで、
原料等も殆ど外国から輸入されており、
ベトナムでは加工工程のみを行うばかりである。
そのため、ベトナムの電子機器製造分野の付加価値は低い。
2010年、この分野の輸出総額は34億USDに達したが、
付加価値が5~10%に留まった。

国内の電子機器製造産業を発展させるためには、
質の高い専門家を必要とするが、
この面ではベトナムはまだまだ弱い。

国内の同産業協会の調査によると、
この10年、外国投資家は設計者の養成を行っていない。
加工ラインの管理、修理、メンテナンスといった
労働人材の育成しかできていない状況だ。
ベトナム大学も、こうした企業の需要に対応するため、
人材を養成し、電子機器設計については殆ど教育をしていない。
設計者が育たなければ、
国独自の電子機器を作ることは出来ないはずである。

アジア内 開発の明暗

外国企業は投資の優遇措置を受け、
低賃金の労働力を確保するために積極的な投資を行っているが、
100%国内産の電子機器製造企業の実力は、弱すぎる状況である。

往時良く知られたViettronic Dong Da、
Tan Binh、Thu Duc、Bien Hoa等の名前が段々消えてきている。
多くの企業が土地使用料を払うために複数の事業を行っている。
例えば、携帯電話のSimカード、
電話カードの販売、組立ラインの貸出等である。

完成の電気製品がない、電子機器部品の質が悪い、
ダンボール箱や、ガイドブックの印刷といった
簡単で価値の低い物しか作れないのがベトナムの現状だ。

タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、
フィリピン等のアセアン地域の他の国では、
強い電子機器製造産業が育ってきている。
その中でも、マレーシアとフィリピンでは、
電子機器の輸出総額が、国全体の50%を占めている状況だという。

国内開発のチャンス逃す

専門家に言わせれば、90年代、
ベトナムにも、電子機器製造業を発展させる機会はあったという。
その時、人気の高かったViettronicメーカーで開発を始めていた。
Viettronic Dong Da、Tan Binh、Thu Duc、
Bien Hoa等のテレビ、ラジオ、カセットプレイアー等の製品は、
Panasonicなどといった外国企業の部品から組み立てられており、
品質も良く、メンテナンスが良好だったため、
当時、参入したてだったSamsungをも上回る勢いがあった。

しばらくして、Sony、Panasonic、Toshiba等の外国企業が
一斉にベトナム進出を果たした。
これらの外国企業の目的は優遇輸入制度を利用し、
ベトナム市場を支配することであった。

ブランド力と、本国での安定した経営力から、
これらのメーカーは短期間でベトナムメーカーを駆逐、
ベトナム電子機器産業は簡単に外国メーカーにとって替わられてしまった。

外国投資誘致政策は、
裾野産業の開発や、現地調達比率等の条件に入っていない。
Sonyは施設や機材を投資する必要がなく、
Viettronoic Tan Binhの工場をレンタルし、
部品を輸入するだけで済む。
さらにWTOを加盟時、
Sonyは国内での販売とメンテナンスネットワークの整備を完了、
外国から製品を輸入するだけで利益を上げられるようになった。
こうした外国企業の動きによって、
国内の電子機器製造産業は自然に弱体化していったのである。

当時、イスラエルや日本等の外国専門家は、
ベトナム政府に対し、まず裾野産業を開発し、
後に組立産業、最後に製品の設計を
開発していくべきだ、とのアドバイスを行った。
しかし、ベトナムは組立産業しか発展せず、
部品製造産業の開発を怠ったため、
電子機器製造産業を発展させられる可能性は低い。

また政府は、電子機器製造産業に余り投資をしていない。
最大規模の案件は、国防省のZ181 工場の投資案件で、
これは30年前にすでに竣工しているものの、
その以降政府からの投資は少ない。
近年、電子機器製造産業への投資は殆どなく、
製紙業や砂糖精製分野への投資を下回っている。

このまま何の対策もなければ、
10年後もベトナム電子機器製造産業が発展するチャンスは
ほとんどないだろう、というのが多くの意見である。



Vneconomy.net  2011年7月25日

« 越企業 海外に積極投資 | メイン | 2010年 世界のFDI調達状況 »

    ・本資料に記載された情報の正確性・安全性を保証するものではなく、
     万が一、本資料に記載された情報に基づいて
     皆さまに何らかの不利益をもたらすようなことがあっても 、一切の責任を負いません。
    ・本資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、
     投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。
    ・本資料の全部または一部を無断で複写・複製することを禁じます。

運営会社編集方針お問い合わせプライバシーポリシー