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2012年08月20日

隠される国営企業リスク 債務削減目標の陰にあるもの


今年の7月末政府は、2011年~2020年と2030年見込みの
公的債務・外国債券戦略について認可した。


この戦略は、ベトナムが段階的に公的債務を減らし、
2030年までに公的債務がGDPの60%を超えない状況を作ること、
その中で政府の借入金がGDPの50%を超えないこと、
外国債券がGDPの45%を超えないことが、目標として掲げられた。
これらの目標を実行するためには、
公的に関するリスクについて、注意する必要がある。

国会で発表された財務大臣の報告によると、
2011年末までの公的債務/GDPは約54.6%、
前年比率より多少減った。
理由は2011年のインフレ上昇率が高いためで、
GDPの現行の価値は高くなったといっても、
ベトナムの借金が減ったわけではないというからくりだ。
その中で外国債券はGDPの約31.1%相当で、
この比率については、世界銀行と国際金融基金(IMF)の評価で
安全とされる比率に収まっている。

ただ、ベトナムの公的債務に関するリスクは、
上記の報告されたデータには表れていない。
公的債務の危機は、国営企業セクターの中にある。
このセクターは、政府から甘い資金支援を受けている。
国営企業は、その経営が困難に陥った場合、政府は様々な方法で支援する。
例えば、資本金の補足、借金の減少、借金の返済期間の延長、
借金の削除、企業の代わりに借金を返済する等だ。
Vinashin、Vinalines、Song Daグループ、
一連の機会製造会社、セメント会社の場合など、典型的な例である。

こうした予算は国家支出として計上される。
国家予算が連続して超過支出になっているので、
政府は国債を発行せざるを得ない。
それなのに、国営企業セクターの不良社債を返済するためには
国家予算を利用する可能性が高い。
それがベトナムの公的債務の安定にとって
一番のリスクといえるのだ。

具体的には、2011年末までGDPの54.6%を占める公的債務は、
政府保証のある外国債券(GDPの11.1%GDP)には含まれていない。
これらの外国債券はみな、国営企業等の借金である。

また、先日発表された財務省の国営企業再構造計画で、
国営企業の国内の借金がGDPの16.5%を占めることが明らかになった。
この数字を入れると、ベトナムの公的債務は、
GDPの80%以上を超え、国際機関の警報比率を大きく超えることになる。

「2020年までに公的債務を最大GDPの65%まで抑える」
と言う国家債務最新戦略は、
国営企業のリスクを配慮に入れたものである。
国営企業の借金は、ベトナム公的債務戦略の一部であるが、
国家債務戦略は、国営企業セクターの借金に対して、
具体的な目標を提案されていない。

目標は上記の他、国家債務戦略では、
国家予算の超過支出が2012~2015年までにはGDPの約4.5%、
2016~2020年までには4%で抑えるというものも掲げられた。
この目標を見ると、今後、
ベトナム政府は国家予算の支出方針を変えないこと、
経済成長の状況を関わらず、
オープン予算 政策(政府は消費に対して大きな予算を使う)を
引き続き実施していくことが見えてくる。



サイゴンエコノミックスタイムズ  2012年8月16日

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