« IMF 近視眼的緩和政策に警鐘 | メイン | 中国パワー、ベトナム市場で鶏卵のシェア50% »

2012年10月08日

膨らむ不良債権 助長する商業銀行の暗躍


今、財政政策が大きな問題となっており、
メディアでもよく議論されている。
この1年間、ベトナムの財政政策は混迷を極めており、
資金貸付活動に対する安定した対策もないため、
現在、国家銀行が臨時的な対策を実施している。


また、市場の傾向も良くない。
9月の物価上昇率(CPI)が前月から2.2%の増加となった。
銀行の預金金利も更に引き上げられる傾向にあり、
12ヶ月以下期限に対しては11~12%、
12ヶ月以上の場合13%で適用されることになった。
この動きは、国家銀行の期待の逆を行く結果となっている。
これまでベトナムは、金融市場、資金貸付活動に対して
安定した政策がなかった。
今まで適用された臨時対策は
預金金利の上限引き上げ、
各銀行に対する資金貸付枠の拡大、または減少などである。

ただ、この1年間で実施された財政政策では、一定の成果が得られた。
マクロ経済が安定し、インフレ上昇率も減少(今年9%)、
為替レートも安定(1ドル=21,000VND)、
貿易活動は若干輸出超過の状況であり、
貿易収支も黒字になると予測されている。
外貨準備資金は2007年より増加、
2012年9月末までに230億USDに達した。
その後、銀行ネットワークの再構造計画で
数社の弱い銀行の合併話が出てきた。

こうした成果にも関わらず、
銀行ネットワークの中で解決すべき問題はまだ沢山存在し、
国民の生活にも大きな影響を与えている。
具体的には銀行の資金貸付活動の手詰まりで、
不良社債が増加し、銀行の清算能力も弱まっている。


何故貸付金利をこれ以上上げることが出来ないのか、
その理由は幾つかある。

(1)国家銀行が強い対策を実施するとともに、
 銀行の預金金利の上限を短期間で
 年14%から9%に引き下げた。
 ただ、その臨時的対策では、貸付金利を大幅に減らすことはできない。

(2)金利の変動枠(NIM)が6%で規定されている。
 このNIMは現代銀行ネットワークでは大きすぎると言われているが、
 財政準備資金率が高く上げられたことと、
 大きな不動産関係の不良社債で銀行の利益が危険な状態になっていることで、
 NIMを減らすことができない。

(3)数社の銀行が関係の深い会社に対して、
 裏で低金利の貸付けを行っているため、
 他の企業に対して高い金利を維持せざるを得ない。
 そうしなければ、利益を得ることができないからだ。

2012年8月末まで、資金流動額は10%増加した。
その中で預金額は約11%増となったが、
貸付額は2.35%増に留まる。
銀行の資金が生産活動に流れていないのだ。
では資金は、今どこに流れているのか?
答えは簡単で「裏側の会社」に流れている。
数社の銀行が裏会社のために資金を集めているため、
預金金利を高く維持し続けている。
それで資金がないため、他の企業に貸し付けることができないか、
「赤字」補填のため、高金利(年15%)で貸し付けることになる。

民間経済セクターは、銀行資金に接することができず、
銀行資金は、最も投資効果の低い公的投資セクターに入れられている。
預金金利は大幅に下げられたが、預金は増加している。
銀行には資金が余っているのに、企業に貸し付けず、
国債に投資している。

ベトナムの不良社債の問題は中々解決できない。
理由は正確な情報がないこと、
解決できる財政力がないことなどである。

正確な情報が不足する理由は二つある。
(1)銀行に二つの会計システムがあること。
(2)国家銀行と商業銀行の不良社債の分類方法が違うこと。

各銀行とも、不良社債を明るみにはしたくない。
利益に影響を与えたくないため、準備資金を追加に補足したくないのだ。
そのため、各商業銀行とも
国家銀行に報告した数字と、手元も実際の数字には誤差がある。
この様な二つの会計システムが存在していることで、
不良社債の正確な統計ができず、リスク管理ができない状況にある。



サイゴンエコノミックスタイムズ  2012年10月8日

« IMF 近視眼的緩和政策に警鐘 | メイン | 中国パワー、ベトナム市場で鶏卵のシェア50% »

    ・本資料に記載された情報の正確性・安全性を保証するものではなく、
     万が一、本資料に記載された情報に基づいて
     皆さまに何らかの不利益をもたらすようなことがあっても 、一切の責任を負いません。
    ・本資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、
     投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。
    ・本資料の全部または一部を無断で複写・複製することを禁じます。

運営会社編集方針お問い合わせプライバシーポリシー