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2009年06月02日

備えあれば、憂いなし ~トラブルを最小限に防ぐ、労働契約書の作成実務~


社会主義国“ベトナム”。労働者の権利は思いのほか強い。
試用期間2ヶ月。国民の祝日は有給休暇。一度雇用したら、簡単には解雇できない。
勤勉で優秀だと言われているベトナム人であるが、急激な経済成長に優秀な労働者の供給は追いつかず、完全な売り手市場がそこにはある。
安い人件費を背景とした製造業の進出ではなく、内需を狙った日系企業の進出が相次ぐ中、高度人材の採用及び安定した雇用の継続は、進出後、成長するためには不可欠である。
本日は雇用の始まり、労働契約の注意点について、紹介したい。


ベトナム労働法第4章、労働契約。
賃金の発生する仕事、労働条件、
双方の権利と義務について合意を締結するもの。

必須記載事項
①業務内容
②労働時間と休憩
③賃金
④労働場所
⑤労働期間
⑥労働安全衛生
⑦社会保障

このほかに、労使双方の権利と義務欄を設け、
労働法規定事項、本契約書に従う旨等を記載するのが一般的。

提出先:保険登録の際原本提出。(会社保管とあわせ最低2部作成)
違反:労働監査で違反が判明した場合、修正・追加の指示を受ける。


注意点

始めに~IDの確認
ベトナム国民は身分証明書を所持しているが、偽造は容易。
求人条件に合うよう他人の卒業証明書の使用、
身分証明書の偽造をし、面接に望む者も。
写真の割り印をチェック、「本人」と契約することを確認すること。

業務内容~ベストな書き方
合意した業務、労働場所出なかった場合、
雇用者は一方的に契約を終了することができる。
配属予定部署の仕事内容の他に
「上司の指示に従う」を記すべき。

賃金・手当て~少なく設定、昇給
最低賃金以上、労使の合意に基づき定める。
(ホーチミン、ハノイの外資企業 120万ドン/月)
ベトナム人にとって、減給や降格は退職を連想させる。
低く設定し、実力に応じて昇格昇給とする形が良い。

労働法で定められている手当ては残業手当のみ。
役職、食事(約30万ドン/月)、交通手当ては会社規定による。
よいに越したことはない福利厚生だが、日本ほど複雑に希望されず、
本給+手当てでいくらもらえるのか、がポイント。

労働期間~期限に注意!
試用期間は「専門あるいは高度技能」を持った人材で最長60日、
それ以外は30日と定められており、この間の給与は本給の70%以上。
試用期間中、合意事項に相違がある場合、
事前通告なしに解雇、退職が認められる。

季節契約(1年未満)、1年、3年、無期限がある。
有限契約、契約終了後も引続き雇用する場合、
契約終了後30日以内に新たに再契約を締結しないと
無期限契約とみなされる。
有限契約は2回まで、その後雇用を継続する場合は無期限契約となる。

労働安全衛生
安全で快適な職場を保証するもの。
ヘルメット・手袋の着用や、証明や室温の適正等
個々の事業内容に沿った提供物等を記す。

手厚き労働者の権利
労働者は、業務内容の相違、家族・個人の理由により、
一方的に契約を満期前に終了することができる。
退職の事前通知は最短で3日、通常30日。
雇用者が契約終了を望む場合、労働組合に申請、
事前通告も最低30日必要となる。
労働者が投獄の場合でさえ、解雇は政府判断となる。
契約締結とはいえ、労働者の権利に手厚いのが実際。

結論
労務の現場に携わると、給与支払日の逃亡、間違った法令を盾にした身勝手な要求が非常に多い。雇用時に労働契約を締結。事前の対策を立てる事で、有る程度防ぐ事ができる。
あまりにも雇用者に有利な契約を作る事は、優秀な人材の雇用機会を失う事にもなりかねないが、今回ご紹介させていただいた、
・上司の指示に従う
・会社のルールに従う
雇用者の自由裁量を残しながら、労働法に定められた労働契約書が運用できる。
また、簡潔に記す事でその他のリスク(翻訳が正確かどうかとか・・・)を避けることもできる。

口約束が有効、個人の思い込み激しい労働法理解が先行するベトナム。
契約書を自己防衛の先行投資と捕らえ、作成、運用していただきたい。


 (福田・大木)

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