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2009年06月23日

ベトナム社会保険加入 企業と労働者それぞれの思惑


日系企業がベトナムと関わる理由や問題点は共通項が非常に多い。

進出・取引開始理由
 安い人件費
 天然資源
 ODA受託
 拡大する内需
問題点
 インフラ未整備
 労務管理
 文化の相違
 役所対応

駐在員たちの頭を悩ませる問題は、住居や電力といったインフラではなく、
労務管理や役所対応にあるようだ。
本日は“企業と労働者、それぞれの思惑”と題し、その問題点を探ってゆきたい。

ベトナム社会保険
国内労働者の80%以上が未加入ともいわれているベトナム社会保険。
低い加入率は問題視されているものの、改善への道のりは遠い。
・低い補償水準
  例:死亡事故の労災保障金 約10~30万円/人
・煩雑な手続き
・未加入者に対する低額な罰金
  例:企業の社会保険未加入 約14万円  
・労働者が正しい知識をもっていない

また、労働者の勝手な思い込みによる会社への無理な要求。
時に業務の全てをストップさせる争議に発展する事もある。
社会主義国ベトナムにおいて、正しく、効率的な社会保険加入は企業の成長にとって
大切なインフラ整備であると共に、避けて通ることはできない業務である。

加入が義務化されている保険の種類
(2009年6月時点)
種類雇用者負担労働者負担備考
社会保険0.150.05労災、出産、年金、死亡
健康保険0.020.01医療(病院)
失業保険0.010.01加入12ヶ月後から適用

加入手続き
 必要書類(個人)用意
 保険加入申請
 医療カード発行
 受取りと確認
 従業員への医療カード配布
 保険台帳発行申請
 台帳発行
 受取り
 台帳への従業員情報記入
 記入済台帳を保険事務所に提出
 台帳の返却
 保管

個別の医療カードの発行、保険台帳の発行の2ステップ。
所要時間約2ヶ月。
入社退社、給与の増減、発行物の破損・紛失の度、対応手続きが必要。

保険申請詳細については別途マニュアルを作成中であるが、
新入社員加入(保険申請)に当たり、注意点を実例に基づきまとめた。

妊婦に注意? 保険目当ての入社
ベトナム労働法第10条、女性労働に関する特別規定。
妊婦、及び12ヶ月以下の子供がいる女性への待遇は手厚い。
労働時間の短縮、労働契約の自動延長、
産休中の給与同等額の保険受取が定められており、
優秀な女性の社会進出を後押しする反面、保障目当てに妊娠を詐称、
労働契約を締結する者も生み出している。
健康診断を受けさせ、詐称ない旨署名をさせる等対応が必要。

記載給与は? 労使で相談2枚の労働契約書
本給の証明書は、各労働者と締結の労働契約書による。
ローカル総務スタッフ提案、経費節約方法は契約書を2枚作ること。
 ①外部提出用(労働契約書)
 ②内部用(支払い給与証明契約書)
役所提出用の契約書(①)には給与額を低く掲載、徴収保険料も低い。
本当に支払う給与は別途契約(②)に基づくため、労使の不満なく
保険料を安く済ませられるというもの。
従業員数が多い場合は、大きな経費削減になるが、不正。
契約書が多い=トラブルが多い=無駄な時間と労力を使う。
行うべきでない、ベトナムの”裏”総務である。

10人目の社員 企業の採用決断
従業員数が10名以上の企業に対し、保険加入は義務となっている。
10名未満の場合、支給給与をグロスとし、従業員各人が加入すれば良い。
”やっかい”業務が発生するか否かの、10人目。
先の成長を見込み、早期に保険の基盤を作っていくのも一案、
しばらく現状維持が見込まれるのであれば、10人目は不採用が妥当。

法の未整備、偏り、抜け道は日本以上に多々あるベトナム。
外資企業の成功は現地の法令遵守をしてこそだが、
法令順守をのみでは成長なし。
遵守にせよ”抜け道”にせよ十分な知識を持っての対応がキーである。



(福田)

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