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2009年06月30日

給与決定基準と背景 “備える事で憂いなし”


企業運営において、最も気を使う業務に1つに給与問題がある。
ベトナムでは同企業、同年齢でも給与額が2倍以上異なることは
珍しい問題ではない。
しかし、日本以上にその基準がきわめて不明確。
急激な異文化の流入による多様化と迎合の中、
給与基準についての指針を紹介する。


認識 「学歴×職歴×労働時間+懐具合=賃金」
社会主義国ベトナムでは、労働以前に給与額が決まる。
また、工場労働者と、オフィスワーカーの労働の質の違いに関して
正しく理解しているオフィスワーカーは非常に少なく、
たくさん働くこと=たくさんの給与
良いポジション=たくさんの利権=多くの賄賂=豊かな生活
を意味する。
特にハノイでは、「毎日一生懸命働くので、企業業績がどうであれ
自分たちの生活が影響されるべきではない」「会社業績が良いのであれば、
給与をもっとよこせ!」といった志向が強く、労使協調といった概念は生まれにくい。

給与水準と目安 
資格と転職の格差社会であることを認識の上、労働者と相談で決定。
以下、目安
大学新卒 US$200~450
管理者クラス US$450~
高学歴、外国語が得意、資格(MBA等)を多く持っている
=高給に値する、という考え方が浸透。
転職者は給与の2~3割アップを望み、
好条件を求めての人材流出入が頻繁に行われる。
同年代の社員間で給与の大きな差が生じている。

種類 双方の合意が大切
出来高給、時給、日給、週給、月給があり、
オフィスワークや外資企業の社員は月給を望む。
年俸制、成果主義は労働法に記載がなく、定着していない。
給与の額面は、国営企業、アジア系外資企業はグロス(保険料等込み)、
欧米外資企業はネット(労働者の手取り)で提示することが多い。
いずれにせよ、採用時の双方での理解、合意がポイント。

給与額決定とその実施 ポイント集
・ 政府の定める最低賃金以上であること
・ 自社基準が大切
   素直さ、管理能力、忠誠心等、自社で求める能力・性質を基準に。
   (経歴書や過去の給与水準は仕事の能力を保証するものではない)
・ 低めの役職、給与設定からスタート
   ベトナム人の誇り高い性質ゆえか、減給=退職の観念あり。
 能力次第で随時昇給とする。一方、高給与=仕事を頑張る
   風潮もあり昇給基準を明確に伝えること。
・ ルールを明確に
   手当て、評価基準、給与計算方法、種類、罰則等、
   給与に関わるルールは明確に伝える。
・ベトナム人労務管理を
サインさせた契約書(労働契約等含む)であっても、
“聞いてなかった…”といった不満は非常に大きい。
論理的ではなく、よくしゃべるベトナム人。不平不満を聞くことに、
非常に、時間をとられるので、有る程度の規模になったら、
労働者を管理するベトナム人管理者を置くことも必要であろう。

昇給 賞与基準
昇給のタイミングは 企業方針によるが、以下の方法が主。
・ 定期昇給(年に一回、6月。企業によって時期は異なる。)
・ 契約更新時の昇給
・ 能力に応じて随時

賞与昇給基準第一位は物価指数・インフレ率。
二桁以上のインフレ率も驚くに値しないベトナム。
その点に基づいた昇給賞与はストライキ防止策の一環でもある。

会社業績、上司判断、考課表、
在ホーチミン日系企業の基準は我々にも慣れ親しい。
ハノイでは、会社業績よりも考課表等個人努力が評価対象、
本人との交渉次第という企業もある。「労働と賃金は正比例」が顕著。

総括 備えあれば、憂いなし 条件多様化の中で
能力が活かせる職場、外資への憧れもあり、
諸条件に対し比較的柔軟な姿勢を持つホーチミン人。
それに対する政府のお膝元ハノイとハノイ人。

急激な成長にともなう様々な条件の多様化、過渡期ともいえる現在、
日系企業は、企業として確たる基準を持ち、コンプライアンスのために
文書化(管理業務)、署名(リスクヘッジ)させることは、必須。
自筆署名済契約書でさえ「知らなかった」と問題になるお国柄。
何よりも初期の相互理解がもっとも重要、個人レベルでの
“分かり合い”が求められる。
“備えあれば憂いなし“といったところか。



     (福田)

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