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2011年09月12日

Moody’s  ベトナム銀行に辛口評価


Moody’sは9月上旬の報告書の中で、
ベトナム銀行の向こう12~18ヶ月の評価について、
消極的な見方を維持することを明らかにした。
この評価は、ベトナム銀行6社に対する調査を経て出された。


調査対象となった6社とは、
ベトナム投資開発銀行(BIDV)、
ACB銀行、Techcombank、軍隊銀行(MB)、
国際銀行(VIB)とSai Gon-Ha Noi銀行(SHB)。
上記6社は、2010年末時点で
ベトナム銀行の総資産の30%近くを占めていた。
このベトナム銀行各社に対する消極的な見方は、
そのままベトナムそのものに対する消極的評価と言える。

Moody’sは、今回の評価の主な原因として、
営業環境の悪さ、マクロ経済が未だ不安定であることを挙げた。
営業環境が銀行の資産リスクを作り、貸付が困難になっている。
Moody’sは「我々は、銀行の利益と
リスク準備資金の減少を懸念している。
現在発表されたデータは、銀行リスクに相当しないものである。」
と発表した。

また、Moody’sはベトナムの銀行システムについて、
いくつかの問題点をあげた。
(1)情報の透明性が低く、銀行の不安定な実情が、顕在化していない。
(2)政策がころころ変わりやすく、運営が難しい。
(3)この10年の資金貸付の成長率があまりに高く、
 インフレと金利の高騰も甚だしいため、借り入れ側に対する圧迫が強い。
(4)上記要素から、銀行の不良債務比率が増加している。
 (例えば、Vinashinは上記6社の借金の2%を占めている)
これらの借金が、不良債務として捉えられた場合、
銀行システム全体の不良債務は、2010年末時点で、
1.9%ではなく3.9%となる。

ベトナムの場合、債務分類の際、
リスク準備資金の引き当て分が少なく、
できるだけ良い会計報告を出す傾向が強い。
Moody’sによると、ベトナム銀行にとって
最大の課題は、流動性を確保することであるという。
特に、資金貸付成長率が高すぎることは、
預金者の心理に大きな影響を与えている。
銀行が今後も発展を続けるためには、
貸付資金がなくなる可能性のある債務のために、
準備資金を用意する必要があり、
そのためには新しく資金調達を行う必要がある。

また、今後ベトナム銀行の活動に影響を与えると思われる
2つのマクロ的の要素がある。
(1)国際経済の回復が遅れる中で、ベトナム経済は、
 海外経済に大きく依存していること。
 ベトナムの輸出総額がGDPの167%に相当している。
(2)政府はマクロ経済を安定させるため、
 より効果の高い政策を実施する必要があること。

ベトナム銀行の利益について、Moody’s は、
2010年の利益は、主に貸し付けの金利であったとしている。
ただ、2011年は資金貸付成長率が20%以下に抑えられ、
一方で活動費用は、インフレと資金調達経費の増加のため、
大きく増えることが見込まれる。

そんな中、銀行システムで唯一救いなのは、
外国投資家がベトナム銀行に投資を続けていることである。
資金供給や技術協力を行い、
ベトナム銀行の発展に対して、長期的視点に立って、
状況を見守る傾向があるのは、銀行だけでなくベトナム経済全体にとっても、
大きなポイントと言える。



サイゴンエコノミックスタイムズ  2011年9月12日

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