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2009年07月20日

貧困家計圧迫する医療費負担 ホーチミン市


貧困層の場合、病人の割合自体は、富裕層を下回っている。
しかし、重病人率は富裕層を上回っており、
特に、家族の総収入における医療費の負担割合について、
富裕層を上回るとの結果が発表された。


これは、ホーチミン市開発研究所が2008年末に行った、
同市社会福祉に関する調査の結果である。

今回の調査は、ホーチミン市の1,000世帯(4,471人)を対象に、
2008年9月時点の病気の感染状況、治療状況、
治療費について行われた。

病気の感染状況

調査によると、3ヶ月間に5分の4世帯
(828世帯、対象の83%)で軽い病気の感染が確認されている。
人数にして1,681人、いずれも風邪、のどの痛み、
腹痛、頭痛等軽症であった。

こうした症状の場合、公的医療機関にかかったのは全体の20%、
民間の医療機関を受診したのは1%、
近くの診療所を受診したのは17%であった。
最も多かったのは自宅療養で、全体の84%が、
他の方法で治療すると答えたのは2%だった。

重篤患者の数については、1年間に411世帯(全体の41%)が
重病、事故による重度の障害を受けていることが、明らかになった。
患者数は505人にのぼる。

1世帯が抱える重篤患者は、
1人が33%、2人が6%、3~4人が1%を占めた。
その中で、10人が死亡(全体の0.2%)、
33人が事故で障害を負った(0.7%)。
残りはガン、心臓病、脳出血等の病気と診断された。

こうした重篤患者を抱える家族の81%が
公的医療機関を受診、続いて民間の医療機関を受診したのは10%、
診療所を受診したのは20%、0.7%がチャリティーの医療施設を利用、
2%が他の方法を採ったと答えた。
ただ、特に41%の世帯が自分で薬を買って自宅療養した、と答えている。

治療状況

もちろん病気に感染した者が皆、医療機関の診断を受け、
治療するわけではない。特に、軽症者の場合は顕著で、
この1年間で重軽に関わらず、医療機関の治療を受けた人は、
調査対象のわずか19%に留まる。

ただ、年齢が高いほど医療機関にかかる割合は増加する。
特に、40歳以上になると治療を受ける人が増加する。
ベトナムでは40歳以下で医療機関を受診する人は5%、
41歳~50歳が12%、51歳から60歳が18%、
60歳以上が31%となっている。

これらの人々は殆どが公的医療機関を受診している(全体の71%)。
その他、19%が民間病院、16%が診療所、
1%がチャリティーの医療施設、2%が他のところへ行く、と答えた。
診療所にかかる割合は、市周辺や郊外(10%・12%)より
市内(24%)の人の方が高い。

現在、ホーチミン市では民間病院がまだ不足状態で、
2008年9月時点でまだ30ほどしかない。
民間病院と診療所は、ホーチミンの病人の大半を治療している。
重軽症の割合は、重病人20%、軽症45%となる。

収入別で分類された各グループ中の、重篤患者の割合はほぼ大差ない。
最下の貧困世帯グループが第1位で13%の重篤者を抱えている。
このまま上位に上がるほど、11%、12%、13%、となり、
最上の富裕層で12%となっている。

しかし、重篤患者を抱える家族の割合は、貧困層のほうが多い。
富裕層が36%なのに対し、貧困層は47%を占めている。

医療費は年間一人当たり平均289万ドン
(保険会社負担を除く、実際に払った経費)となった。
地域別では、市内で307万ドン、市周辺で354万ドン、
郊外に行くと152万ドンとなっている。

性別で見た場合、
男性は年間一人当たり305万ドン、女性は225万ドン。
年齢別で見た場合、医療費の増加は年齢と共に上昇する傾向である。
0歳~5歳:57万ドン、6歳~10歳:35万ドン、
11歳~17歳:62万ドン、18歳~30歳:229万ドン、
31歳~40歳:390万ドン、41歳~50歳:409万ドン、
51歳~60歳:228万ドン、61歳以上:338万ドンである。

職業別で見た場合、医療費の格差は更に顕著だ。
小中学生・大学生:年間一人当たり64万ドン、
農民:96万ドン、主婦:164万ドン、工場の労働者:182万ドン、
販売店員:207万ドン、民間企業の社長:253万ドン、社員:334万ドン、
一般労働者:377万ドン、失業者:389万ドン、定年者:456万ドン、
頭脳系労働者:515万ドンとなった。

他国と同様、生活水準が高くなると
健康に対する関心も高まることも明らかになった。
1990年、世帯収入を占める医療費の割合は月平均3.4%であった。
これが1995年には4.2%に増加、2000年には5.0%となった。
その後2002年が6.5%、2004年が7.0%、
2006年が5.6%と年々上昇している。
一方で、日々の生活費は徐々に減少傾向にある。

こうした増加の理由は、人々の収入が増加していることもあるが、
一方で、ホーチミン市の医療施設が大きく改善され、
治療費自体が上がっていることも挙げられる。

貧困層にとって、医療費は大きな負担である。
貧困層が、年間支払う医療費が201万ドンなのに対し、
富裕層は404万ドンであった。
ただ、入院中の病人を別で計算すると、
平均医療費は年間一人652万ドンである。
従って、貧困層が471万ドン、富裕層が918万ドンとなる。

貧困層の世帯が支払える医療費は裕福層より低い。
当然、貧困層は病院の治療もあまり受けることができず、
安い薬しか買えない。
結果、治療の効果も裕福層より低くなってしまう。

2008年9月の調査によると、
医療費の月平均は一人当たり63,000ドンである。
収入別に見ると、医療費は、貧困層のほうが増加する傾向にあるという。
貧困層が8.6%を占めるのに対し、富裕層は3.9%に留まる。
従って、収入が低ければ低いほど、医療費が家族にとって
負担の大きなものとなっている。(下記の表を参考)
医療費の負担について、
1998年に行われた社会科学研究学院の調査ではこう記されている。
富裕層の医療費が世帯収入の1.47%しか占めないのに対し、
世帯収入が低くなるにつれて、2.13%、5.06%、5.84%と、
高くなっている。

これは、2001~2002年の保健省・統計総局の調査結果も同様である。
富裕層の医療費が全体の収入の11%なのに対し、
その下の収入層で17%、さらに収入が下がると
23%~24%を占めることとなる。

2002年の医療費を1993年、1998年と比較すると、
最下層の増加率は富裕層を上回る結果となっている。
入院治療費は、年間一人当たりの収入に対し、
2008年9月の時点で富裕層が28%、
第2富裕層が40%、貧困層が83%(年間収入全て)となった。
これでは貧困層にとって、負担が大きすぎる。
2004年の全国の統計資料も同様である。
富裕層が25%、貧困層が40%であった。
ホーチミン市における一人当たりの収入は他地方より高い。
しかし、ホーチミン市に住んでいる人の生活基準が、
他の地方より高いわけではない。
実際、市内の生活費は他地方より高いし、入院費も高いのだ。
従って、この都市の貧困層は、裕福層に比べ、
収入の中で高い割合を占める医療費を負担しなくてはならない状況である。

「家族全員が医療サービスを受ける財政力はあるか。」
という質問について、貧困層の47%が大変困難と答えたのに対し、
富裕層でそのように答えたのはわずか4%であった。
重篤患者を抱える家族のうち、貧困層の51%が、
借金をしなくてはならないという。

ホーチミン市は、全国で最も医療費が高いため、
貧困層の負担も最も大きいと考えられる。

長年ホーチミン市は、貧困層に対する支援政策を適用しているが、
社会の所得格差と不平等の状況は、
なお改善できていない状況が続いている。

各グループごとの一人当たりの医療費の割合(全体消費中の割合)
2008年ホーチミン市
グループ一人当たりの月の消費(VND)うち、医療治療、健康保護のための経費(VND)消費全体の医療治療・健康保護経費の割合(%)
第1グループ594,51351,0318.58
第2グループ795,26538,1804.8
第3グループ972,69571,8367.39
第4グループ1,259,61183,6786.64
第5グループ1,841,01272,7233.95
統計1,087,19463,3875.83
出典:2008年9月のホーチミン市における調査結果

調査対象(調査モデル)

今回の調査は2008年9月、
ホーチミン市の代表的な11地区の人民を対象に行われた。
調査対象の選択方法は典型的な地区と無作為に選択した地区を選ぶ。

11郡にある22地区の122団地に在住している
1,000世帯4.471人を対象に調査。
そのうち市内在住は400世帯、市周辺地域が400世帯、
郊外在住が200世帯である。



サイゴンエコノミックスタイムズ  2009年7月20日

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