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2010年10月15日

政策遅延で投資チャンス逃す


政府管理機関は「政策が道を開き、計画が一歩進む」
ことを良く理解している。
しかし、政府が発展をのぞみ、
投資家も投資を希望しているにも関わらず、
政策規定がないため、投資機会を逃してしまう分野が多くある。
これは大きな時間の浪費である。


10月上旬、イギリスの港湾投資運営企業団体が、
投資機会の調査をしにベトナムを訪れた。
ベトナム運輸省によると、
イギリスの企業代表団の訪越は、非常に積極的な動きであり、
Van Phong港(Khanh Hoa省)、
Lach Huyen港(Hai Phong市)等の
大規模整備計画にとって、大きなチャンスとなる、と考えられている。

ベトナム側が期待する投資方式は、
BOT(建設-使用-引渡し)とPPP(公民協力)である。

上記の港湾整備計画は非常に大規模のものであり、
輸出製品の運輸状況を改善させ、
ベトナムが周辺地域内で、重要な通過国となれる可能性を持っている。
実際、ベトナム投資家はこれらの計画の実施許可を得たものの、
資金力と展開能力の問題により頓挫しかかっている。
また、港の完成後、
ベトナム企業がうまく運営できるかどうか、
ということに対する懸念は大きい。

そのため、ベトナムは資金・技術両面から協力を得られる企業を
探し求めている状況だ。
そして英国企業も、ベトナムの様な新興市場に対して
高い関心を示している。

しかし両者の協議は、何の成果を得られなかった。
投資側は、投資の可能性について言及せず、
政府管理機関も、何の制約もできなかった。
原因は、公民方式(PPP)投資に関する規定が
未整備である事による。
そのため、投資家はリスク回避をしたがり、
政府管理機関は、外国側に何か約束を取り付けるための根拠がない、
という状況となっている。

先日、イタリア企業団がPPP方式での
ハノイ市とホーチミン市での高速道路建設計画と、
市内交通システム整備計画への参加を希望し、ベトナムを訪れた。
しかし、成功する見通しは全くなく、
投資家はPPP投資方式に関する規定の制定を待っている状況にある。

そのため、国内の交通インフラ整備の分野に
投資を希望している投資家は、
皆、法律面の整備を待っている状況だ。

2010年商業技術シンポジウムの中で、専門家は、
ベトナムの技術市場の発展が遅れているのは、
ベンチャーキャピタル活動を進めるための政策が
不足しているためである、と指摘した。

ベトナムは将来有望とされるものの、企業規模はまだ小さい。
投資機会は多いものの、外国大投資家に対する説得力は不足気味である。
そのため、ベンチャーキャピタルは、
ベトナム中小企業に対し、投資・育成後、
外国大規模投資家に推薦する必要がある。
ただ、このやり方は、
国内ではあまり関心を示されていない状況である。

現在、ベトナムで活動しているベンチャーキャピタルの数はまだ少ない。
これはベトナム企業と経済にとって、大きな損失である。

また、現在ベトナムが開発を熱望しているのが裾野産業である。
これはベトナム国内の生産能力を向上、輸入超過額の軽減、
経済の付加価値の引き上げにとって、非常に重要な分野である。
ただ、今でも外国投資資金を調達するための
法律整備は不十分であり、
特に、裾野産業分野への投資はまだまだ不足している状況だ。

先日、タイタン鉱山の採掘・精製企業が
タイタンを輸出したいのに、
タイタンの輸出税がまだ規定されていない、
という問題が取りざたされた事があった。
また、技術進歩に伴い、
精製品の抽出も可能となっているにも関わらず、
源鉱物と同税率が適用されている。
そのため、大規模投資を行い、
付加価値を引き上げた製品を作る企業が、
赤字、という状況になっている。


ベトナム経済の最大の問題は、インフラ整備が進んでいないことである。
この状況を良く認識しているベトナム政府は、
PPP方式を含む様々な方法での投資を促進している。
しかし、法律面での整備が遅れているため、
PPP方式などでの投資が成功している案件は一つもない。

現在、ベトナムは投資家の選択基準、
PPP案件に対する評価と方法がまだない状況にある。
しかし、上記は投資家にとって前提条件である。
政策が不透明なために、投資する投資家がいないのだ。

裾野産業も同様に、政策の決定が遅れている。

ベトナムは部品輸入のため、数百億USDを支出し、
輸入超過という大きな損失を被っている。
それにも関わらず、政策策定者と管理機関の迷走により、
適切な管理体制を作り出すことができていない。

また、政府直轄裾野産業
コンサルティング委員会が設立されてはいるものの、
状況は全く変わらない。
これまで、多くの外国企業が投資機会を見つけにベトナムを訪れた。
結果、それらは、裾野産業がベトナムより発展している
第3国に移ってしまった。
これは、案件そのものの機会が失われただけでなく、
経済競争力も影響を受けた事になるのだ。



証券投資紙  2010年10月15日

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