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2012年05月03日

国営企業が持つ経済活動の主導役とは?


国営経済セクターの資金使用効果は民間より低いとされているが、
その一方で主導的な役割を持つと言われている。


経営・営業の分野では国営経済セクターが活動の中心的役割を持ち、
ネットワークを主導しているのは国営公社や国営経済グループだ。
国営企業はどうやって役割を果たしているのか?

多くの資材・資金力を把握

国営企業が国の力をどう利用し、どのように貢献しているのか
民間企業とFDI(外国投資関係企業)の比較で分析してみる。

統計では2001年からの5年は57%と37%だった国営企業の投資額と
借金が2006年~2010年で45%と31%に減少した。

これは国営企業が民営化され、1999年の企業法施行以来
民間の経済セクターが巨大化してFDI資金がベトナムのWTO加盟で
大量に導入されたことが原因だ。

投資面では投資品目の多くが予算に含まれておらず、
投資活動が子会社経由のため、投資総額に反映できていない。
また、特にロジステックや航空運搬、通信分野は国家予算を投資した
インフラを利用している。

資金貸付面でもベトナム開発銀行から資金を借りられるが
銀行ネットワークのデータに含まれず子会社の借金を把握していない。

国営企業には土地の確保・安価な使用料などの特権や利益があり
それを担保に融資を受けられるが、民間にこのような選択肢はない。
また、政府の支援で国営銀行から優先的に資金と外貨を借りられる。

制限的な貢献

国営企業は特別な優遇制度や営業の独占権を持っているが、
貢献度は縮小化をたどっている。
政府の報告書には定期的に統計総局のデータが掲載され、国営企業が
GDPの約3分の1に貢献しているとされた。

しかし、これは国営経済セクター全体の数値である。
国営管理、国防安全、社会福祉、文化、医療、教育、スポーツ、
団体活動等を除くと、国営企業の貢献は2006年~2010年の5年間で
GDPの28%しかなく、2001年~2005年の30%を下回る。

資金利用比率は国営と民間が逆になっている。
2006年~2010年は国営企業が投資総額の45%を占めるが、GDPは28%。
民間企業は投資総額の28%に対してGDPは46%だった。

GDPの成長も国営企業の貢献は2001年~2005年の33%から
2006年~2010年の19%へと大幅な減少を示しており、
民間企業が45%から54%に増加している。

原因の1つ目は国営企業のGDP成長率が2001年~2005年の7.6%から
2006年~2010年の4.0%に減り、民間企業の半分となったことだ。

2つ目は国家予算に対する国営企業の貢献が減っていることである。
この10年で石油を除く国家予算への貢献は20%しか増加しておらず、
徐々に小さくなっている。
国営企業は5年で19.6%の貢献度を達成し、民間の1.5倍だったが、
その後は17.6%に減って民間の5分の1となった。

そして3つ目は人材である。統計総局の調査結果によると、
国営企業は労働者数が急激に減少し、前5年の44%が23%になった。
さらには新規雇用も-4% から -13%になっており、新人を雇用せず
解雇を繰り返した結果、人材活用は民間企業の負担となった。

解雇は民営化の過程だが、成長は新たな人材の採用による。
これは経済の発展に最も重要な要素だ。
ベトナムでは年々若い人材が育ち、年間で150万人の人材が育成される。

4つ目の原因は工業生産活動である。
これはベトナ工業化戦略の中心だが、まだ国営企業の役割は小さい。
1995年に国営・民間の生産は50%-50%の比率だったが、
2010年には25%-75%。生産総額に対する国営企業セクターの貢献も
29%から12%以下に減った。民間企業は34%から43%に増加している。

5つ目は輸出額の規模だが、正規のデータで国営・民間の輸出・輸入額が
区分けされていないため正確な数値が出せない。

原油、石炭、鉱物の輸出額を除く国営企業の貢献度は総額の約15~20%。
輸入額は計算しにくいが、Dung Quat石油精製工場、Vinashin等の
運営状況を見ると、技術輸入等で大きな資金を支出したようだ。

FDIセクターは過輸入で輸出額が全体の20%に満たないが、
輸入額過大の状況から見て、国営企業はベトナムの超過輸入の原因と言える。
国営企業が効果的に活動し、競争力を高めるための対策が実施されないと、
収支バランスやVND切り下げの圧力等、マクロ的な問題が解決できない。

これらは国営企業セクターの活動効果に関する過去の評価と一致している。
経済専門家のBui Trinh氏が発表した「投資効果評価(2009年)」によると
どんな方法で計算しても同セクターのICORは全体より1.5倍高くなる。

また、「国営企業における国家資金、資産の管理、利用状況」の報告書では
91社中56の国営企業でROE(利益/株主資本)が15%以下となっており、
2008年の金利を下回った。
つまり、正しい方法で計算すると全ての国営企業が赤字という状況だ。

2010年の財務省の統計ではROEが16.5%にとどまり、商業銀行の金利と同等。
利益総額の80%がPetro Vietnam、EVN、VNPT、Viettel、TKVの5社からで
残りのROEは商業銀行の金利より低い。

国営企業の利益は国内市場の独占営業権、高額な税金、安い資金、土地、
資源の利用権、高条件な契約の把握等から発生する。

対応は民間企業と平等に

現在、国営企業は様々な優遇措置を得ているが効果的に活用できておらず、
国家予算やGDP、工業開発・輸出活動の促進等に貢献できていない。
民間企業は効果的に活動して経済発展に貢献しているが、政府の支援がなく
資金源と出会う機会が少ないため、平等とは言えない環境で活動している。

Vneconomy.net  2012年5月3日

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