« ベトナム教育と人材の問題点及び提言 晴耕雨読 | メイン | ベトナム証券市場の中期展望 »

2009年02月18日

分野別 09年経済動向


SSI証券研究部は、先に発表した報告書
「2008年の市場動向と2009年の展望」の中で、
VN-Indexが、241~357ポイントの間で変動する、
と予測した。


この報告は、所得税の納入延期(2009年5月まで)が
公表される直前に発表されたもの。

2009年の経済状況 全体

報告書によると、
ベトナム経済は、2009年前半も困難な状況が続き、
GDP成長率も約5%~5.5%留まるという。
年末までには、政府の経済支援対策の効果も
現れるだろうが、国内経済状況の改善には、
なお時間がかかる見込みである。

また、FDI、ODA、在外ベトナム人の送金等、
外国から資金も現状維持、若しくは減少する恐れがある。
このリスクは、貿易赤字問題に直結しており、
清算バランスシートのリスクが拡大することになる。
これは、政府にとって今年最大の課題となる。

これらの資金減少と輸出減益のため、
ベトナムが成長を続けるためには、
国内投資に力を入れる必要がある。
今年のFDI、ODA、在外ベトナム人の送金は、
2008年から‐40%となると共に、
外貨準備資金220億ドル(2008年9月の時点)を
維持できた場合、為替レートの変動によっては、
今年の貿易赤字がかなりの額に上ることになる。
そして、外国資金の借入経費が高騰することになる。

グラフ国内銀行についても、
返済期間の延期、社債切替え、資産の損失などにより、
資金運用がさらに慎重になることが予想される。
安全な投資先として、国債を購入する銀行が増えるだろう。

ただ、こうした動きはVNDの切下げにつながり、
経済成長を促すための重要な要素となる。
VNDは2009年末、1ドル18,500VND前後にまで
下がると予想されている。
ただこれ以上下がると、政府にとって
外国借款の返済が大きな負担となってくる。



VN-Indexの変動

SSIは、2009年のベトナム証券市場は
さらに下落が続き、241~357ポイント間で変動するだろう、
と分析している。
最高でも389ポイントは超えず、
年末に327ポイントまで回復するかどうか、というところ。

ただ、これだけ問題が山積していても、
ベトナムに対して長期的な投資視野を持っている投資家にとっては、
まだ数多くのチャンスが存在する。
資産構造の健全な会社は、この状況を乗り越えてくるだろう。
さらにSSIが報告書を発表したのは、
所得税延期(2009年5月)と政府の金利支援対策が
発表される前のことである。

また、2008年は、金利、為替レートの変動、財政投資赤字、
在庫品の値下げ処分などの影響により、
各企業とも営業成績が振るわなかった。


分野企業価格変動(%)
不動産TDH、SJS、VIC、NTL、HDC、KBC、VPL、ITA-0.6431
HPG、VIS、SMC-0.5878
プラスチックNTP、BMP-0.731
セメントHT1、BCC、BTS-0.6303
運搬VNA、VSP、PVT、VIP、VTO、GMD、DXP、VSC-0.6855
石油サービス・機材PVD、PVS-0.4732
自然ゴムDPR、HRC、TRC-0.766
電気VSH、TBC、SJD、RHC、PPC、NLC、KHP、HJC-0.7756
水産ANV、MPC、AGF、ACL、VHC-0.5576
石炭NBC、TC6、TCS-0.2903
銀行ACB、STB-0.6595
ミルクVNM、HNM-0.5999

SSIは、ベトナム経済の回復は、
今年末になると予想している。
物価の急騰や、資材価格の急落など、
各企業が増益となる環境が整い、
日用品、薬品、エネルギー分野などは、
高い利益成長率を維持する可能性がある。




各分野の展望


銀行分野

銀行分野2008年の各銀行の利益は、
公定歩合の急速な切下げ
(年間14%から8.5%に)により減少、
年末、各銀行の貸出金利が年間12.75%に下がったことで、
調達金利より低い数値となった。

09年は、信用成長率は08年6月の2.95%→0.7%に低下、
外貨売買、資金運営
(年利20%~25%の国債を安く購入し、
 年利10%以下の国債を高く売る)、
金の販売、輸出入に対する資金貸出による利益が
主な収益となるだろう。
銀行システム全体の負債は43.5兆ドンで、
07年の2倍となる。
07年に2%だった負債の割合は3.5%に増加。

昨年末から、公定歩合切り下げが続いているため、
今年の第1~2四半期は各行とも、大きな減益となる。
政府は4%の金利支援を行っているが、
信用成長率は21~23%の間で変動し、
資金供給総額(M2)は18~20%ほど増加する。
負債や不動産貸出に関するリスクは2009年も続く見込み。



鉄工分野

鉄工関連の政策は昨年から変更が続いている。
昨年6月から、世界中で鉄価格が急騰しており、
各企業が今年前半に急成長しても、
年末には大量の在庫を抱える羽目になる恐れがある。

不動産分野の鉄消費需要は3分の1下がり、
月あたり10万トンとなっている。
2009年、建設用の鉄消費量は、
410万トンに下がり、2007年の440万トンを下回るだろう。
しかし11月以降、消費量は段々増加する見込み。

09年は鉄工分野にとって困難な年である。
消費成長率は2%~5%に留まり、
鉄価格は現在からそれほど高騰はしないだろうが、
政府の建設市場支援策が大きく影響することになりそうだ。



プラスチック分野

プラスチック分野昨年はPVCとHDPEのプラスチック資材が急変、
昨年7月に1トン当たり1,300~2,000USD以上に上がった。
この時点で原油価格は145USDに 上昇していた。
その後、プラスチック資材の価格は50%以上を下落、
この5年間で最安値となり、多くの企業が大赤字となった。

企業の利益は、為替レート、金利の変動、
財政投資の損失による影響を、大きく受けた。
また、市場は建設案件の減少に伴い縮小。
ただ、Binh Minhプラスチック(BMP)、
Tien Phongプラスチック(NTP)の上場2社は、
まずまずの営業成績を残した。
NTPは、売上げと税引後利益が21%成長し、
BMPは、売上げが22%増となり、
利益は970億ドンに達した。

今年、プラスチック資材の価格は、
これ以上下がらないと予測されている。
市場のニーズは薄いが、
各企業とも昨年同様の収益維持を期待している。
生産自体は5%~10%減少するが、
建設分野と密接に関わる分野のため、
これからの発展に対する期待は大きい。



セメント分野

セメント分野昨年は原料価格の急騰に加え、為替レートが上がったため
原料の輸入価格も高騰した。
セメントは昨年5月末、ちょっとした「ブーム」になった。
南部市場では、セメント不足となり、
工場の販売値は原価よりも1トン当たり6~10万ドン低くなった。
これは、政府がインフレ抑制のため、
セメントの価格を安定させたためである。

昨年末、建設会社各社が数件の建設延期を発表したため、
セメント需要が減少した。
昨年のセメント消費量は4,000万トン、前の年の11.35%増。
今年は供給源増加のため、
セメントの価格が下落する可能性がある。
消費量自体は約4,100万トンに達する予想だが、
供給源が4,626万トンに留まる見込み。
セメント生産用の石炭価格は、
1トン当たり50~63.5万ドンに上昇、
電気料も上昇傾向のため、原料の調達経費は、
1トン当たり6~8,000ドン増となる可能性がある。
政府の建設分野支援策が、
セメント分野にも発展の機会を与えることになりそうだ。



運搬分野

昨年、中国の建設資材の需要が高まったことを受けて、
運搬分野が急速に発展した。
運搬手段はまだまだ制限が多いものの、
ニーズの急増に伴い、貨物運搬が急速に発展してきている。

各企業の売上げは、
年初9ヶ月に急増の後、年末は急減少した。
昨年6月から、投資家は金融危機に直面し、
各運搬契約を実施できなくなり、
ニーズも減少傾向となった。
運賃も急速に下がり、ベトナムでは、VSPの運賃が
1日当たり7万USDから9,000USDに下がった。
GMDは国内のコンテナ運搬サービスを中心に活動しているため、
国際金融危機の影響をさほど受けなかった。

ガソリン、オイルの運搬需要は、
貨物、原料の需要より安定していた。
PVTは年内に高額運賃を取ったため、
売上げと収益が急増加したが、VIPとVTOは軽い影響を受けた。

今年、VSP、Nosco運搬会社などは、
経済衰退の影響から、困難な状況になることが予測される。
またPVT、VIP、VTO等の液体系運搬会社は、
Dung Quat石油精製工場の活動開始により、
原油の輸入需要が減少することで難しい状況になりそうだ。
運賃自体も今年中に20%まで減少する可能性がある。



石炭分野

石炭分野昨年は生産量、消費需要共に急減した。
輸出総額は前の年より40%減となった。
政府は電気、セメント、肥料、紙生産会社に対し、
石炭販売価格の値上げを行った。
石炭の輸出税は、08年第4四半期から
20%増加(2度に渡り)。
各企業の営業成績は良好で、概ね年間計画を達成している。

今年は石炭の輸出価格が低下、輸出総額も減少する見込み。
ベトナム石炭公社(TKV)の今年の生産量目標は
3,500万~3,600万トンだがが、
これは昨年の3,980万トンを下回っている。

石炭輸出税は、2月5日付財務省決定により10%減少。
09年は石炭開拓業者にとって、輸出困難な年になりそうだ。



ミルク分野

ミルク分野昨年ミルク分野の営業成長率は
07年より26%増加し、8億ドルに達した。
理由は、ミルクの価格が
15%~20%上昇(高級品は30~40%UP)したが、
生産量自体は5~6%増に留まった。
これにより昨年第3四半期末、
ベトナムにおけるミルク小売値は世界で一番高くなってしまった。

メラミン混入事件を受けて、
9、10月のHanoimilk、Ancomilk等ミルク会社の
売上げは30%~50%減となった。

今年、第1四半期の消費量は前年同期の-20%。
しかし、09年のミルク市場の売上げは、
9億ドル、昨年の+12.5%に達することが予想されている。
これは、高級ミルクの価格高騰が見込まれているためである。

また、外国ミルクがベトナム進出を促進した場合、
国内のミルク価格は7~9%上昇する。
ミルク原料の輸入は増加傾向である。
このため、各企業の利益は15~16%増加する見込み。



CafeF.net 2009年2月18日

« ベトナム教育と人材の問題点及び提言 晴耕雨読 | メイン | ベトナム証券市場の中期展望 »

    ・本資料に記載された情報の正確性・安全性を保証するものではなく、
     万が一、本資料に記載された情報に基づいて
     皆さまに何らかの不利益をもたらすようなことがあっても 、一切の責任を負いません。
    ・本資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、
     投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。
    ・本資料の全部または一部を無断で複写・複製することを禁じます。

運営会社編集方針お問い合わせプライバシーポリシー