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2009年06月20日

水産企業のチャンスはいずこに


最近の水産分野の株式は、
積極的な変動が必ずしも良いものといえず、
そのような動向は
水産分野と企業などにおける
基本的な要素にマッチしたものとはいえない。


大幅に成長した1998–2008年(年間平均18%)の後、
ベトナム水産輸出活動は2009年に入り
大きな困難に直面している。
2009年5月末までに
水産輸出総額は13.69億USDと
前年同期より9.4%減少している。

輸出状況に関する2009年6月上旬の
最新データも芳しくなく、
1週間前よりかなり減少している。
H1N1新型インフルエンザの影響で
水産物の輸入が増加することも考えられたが、
豚肉を食べることによる感染に対する確証もなく、
消費者の豚肉を食べる習慣はさほど変化はなかった。

輸出商品については
主力品目にエビと魚(主にTra魚、Basa魚)がある。
2000年以前はエビが主力であったが、
2000年-08年にかけて、
Tra魚とBasa魚がブームとなった。
また、2008年の主力は魚類であったが、
2009年に入りこれら2種類の魚の輸出市場は
縮小傾向にあり、
相対的にエビの比重が戻りつつある。

具体的にはTra魚、Basa魚の輸出額が
年初5カ月で47,700万USDと、
前年同期より4.1%減少している。
現在の状況では、これらの商品の輸出は
なかなか回復できない状況にある。
ロシア市場がベトナムの魚類の輸入を再開したが、
その額がまだ小さいものである。
また、年初5カ月のエビの輸出額は
44,110万USDで、
こちらも前年同期より7.3%減少している。
また、Tra魚、Basa魚と異なり、
ベトナム産のエビは、
他国産の安価なエビとの競争にさらされている。

また、調達も困難で、
さらに2008年には異常気象のため、
エビの家内養殖は大きな損失を被った。
このため、輸出向けエビの加工活動も
積極的には行われておらず、
多くの工場は稼働率30%ほどである。

市場について:
日本はこの数週間において
冷凍エビとイカを中心に
ベトナムの各種水産物の輸入を促進している。
その要因として、
日本企業でのこれら2種類の商品在庫が
急速に減少しているからである。

一方、アメリカ向けの市場開発は
2009年農業法において、
さまざまな困難問題に直面している。
ベトナムのTra魚、Basa魚は
魚の切り身(加工品)に分類されるため、
品質に関する厳しい条件を満たす必要がある。
また、ベトナムエビに対する価格の引き下げと
課税に関する検討結果は
アメリカ商業省により
2009年7月末に発表される予定である。

輸出市場に関する困難な問題とともに
水産分野における競争激化もある。
企業はお互いにけん制した価格を提示するため、
結果として輸出価格を押し下げるとともに、
水産分野の威信が損なわれることとなる。
さらに、このような競争は、
ベトナム水産輸出の活動に対して
長期的なダメージを与えることとなるだろう。

2009年前半では、
ベトナムの水産輸出活動は、
まだ積極的な動きはない。
40億USDの輸出計画は
後半に持ち越されることとなる。
年末は、水産企業の活動において、
収穫の時期になるのだろう。

主要水産企業の紹介
1.Nam Viet株式会社
2009年4月末までに、
Nam Viet株式会社(ANV)は
Tra魚、Basa魚の輸出第1位の地位を失い、
Vinh Hoan株式会社(VHC)、
Hung Vuong株式会社に次いで
第3位となっている。
Vinh HoanとHung Vuongの輸出額が
1社当たり約3,600万USDなのに対し、
ANVは2,800万USDでしかなく、
上位2社より30%低い。
また、ANVの営業成績は
第2四半期においても大きく変わらず、
第2四半期の輸出額は
前年同期の40~50%程度と予測される。
さらに、Ferocrom計画も
早期に活動を開始できない状況にある。

2. Minh Phu水産株式会社 (MPC)
MPCは年初5カ月における輸出量が4,098トン、
輸出額にして4,390万USDi達した。
量、額はそれぞれ、2009年対計画比25%、27%に達した。
第1四半期の営業成績も印象的なものでなるが、
主に財政投資活動による収益である。
ただ、残念ながら、
MPCは第1四半期に短期財政投資213品目を売却し、
第2四半期の市場の急速な上昇を見逃した。

3. Ben Tre水産輸出入株式会社 (ABT)
2009年4月の営業成績によると、
ABTの4月の売上は第1四半期より高く、
累計4カ月で計画の39.25%に達した。
また、税引き後利益は急速に増加して63億VNDに
年初4カ月の利益も153.8億VNDに達し、
2009年計画の42.7%に到達、
ほかの水産企業と比較すると、
ABTの成長は著しく、
2009年の計画を達成する可能性が高い。
一方、この会社のリスクとして
財政投資活動リスクがあり、
1,900億VNDを原価投資したが、
予備資金としてさらに690億VNDを引き当てている。

4. 第1水産株式会社 (SJ1)
SJ1は、2009年第1四半期において
スピーディーに発展しており、
売上は前年同期より102.1%増加、
税引き後の利益も20億VNDに達し、
前年同期より46.75%増加した。
また、累計5カ月での売上も660億VNDに、
税引き前の利益が30億VNDに達した。
売上と利益は、対計画比の38%、50%に到達した。
そのほか、この会社の主な輸出市場は
日本のほか、LottemartとMetroチェーン店を通じて
ベトナム市場にも参加している。
6月中にはTan Phu Trung工業団地(ホーチミン市)で
新工場を起工する予定で、
第1段の投資総額は500億VND、
2010年第1四半期に稼働予定という。
さらに今後、Binh Chanh建設会社(BCI)と協力して
現在の工場の敷地にSJ1 Plazaビルを建設する予定である。

5. Hung Vuong株式会社
この会社はまだ上場していないが、
2008年の営業成績は非常に優秀であった。
2008年の利益は5,000億VND以上に達したが、
財政投資の準備資金として2,530億VNDを引き当てたため、
実際の利益よりやや減少し、
2009年第1四半期の利益は480億VNDであった。
(子会社の利益を含まない)
また、2009年に関して、
同社は3.3兆VNDの売上計画を立てている。
同社の戦略的に多様な分野で活動するグループで、
Tra魚を主に開発品目としている。
具体的には魚の養殖、輸出商品の加工、
冷凍倉庫の整備、養殖用資材の生産などである。
2010年までの計画は、売上を8兆VNDとし、
2009年第3四半期にはHOSEに上場するとしている。
また、配当については、20%を株式で、
10%を現金で支払う予定である。
さらに、2009年の上場前には
10%の配当を支払う予定という。

結論
未上場を含む大手水産企業の営業が
2009年第1四半期には概ね黒字で、
赤字はANVだけである。
また、その中でも成長が顕著なのは
ABT、BLF、 CAD、MPC、NGC、VHCである。

上場している水産企業の時価総額は大きくなく、
3月から余り大きく上昇はしていない。
従って、この時点が最良な投資時期であるといえよう。

ただ、水産分野の株式は
以前から機関投資家、特に外国投資家に注目されており、
外国投資家が大量の株式を高い株価で購入するなど
外国投資家や大株主の意見が株価に大きく影響を与える。

従って、最近の水産分野の株式が
積極的に変動することは
決して望ましい状況とはいえず
株価の上昇が、水産分野や企業の発展に
直結するものではない。
それは、その主な原因が
機関投資家による大量の購入申請によるもので、
財政投資や不動産投資といった
水産分野の主要営業分野とは
直接関係のない要素によるものだからである。



証券投資紙 2009年6月19日

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