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2010年11月12日

為替レート問題と国家銀行の役割


ここ数週に渡って、外貨取引市場は非常に緊迫している。
自由市場ではUSD/VND為替レートの上昇が続いており、
一時期1USD/21,200VNDとなる時期もあり、
国家銀行の最高値(USD)を9%近く上回ることとなった。


為替レートが最高値を超えると、国家銀行の動きが注目されるようになる。
しかし先週末、為替レートと金利の問題についての発表を行ったのは、
国家銀行総裁ではなく、国家財政監査委員会副委員長であった。

国家銀行は権限が限られており、
ベトナム経済の特徴に合わせた金融政策を実施しなくてはならないため、
政策の効力は制限されてしまう。

ベトナムでは、VND、金、USDが同時に貨幣価値を有している。
USDだけではなくて金も重要な投資ルートと考えられているのだ。
金は現状、資金供給源(M2)の約40%を占めているが、
国家銀行には、金とUSDの取引に対して、
有効な対策を講じることはできない。

また、VND、USD、金は簡単に変換できる。
ベトナムでは、外国への送金に対し厳しい制限と監査があるが、
外国からの送金には非常に寛容である。
2009年、自由市場で取引された為替レートが、
常に銀行レートより高く、
人々がUSDや金を大量購入していることにも、その傾向が反映されている。

ベトナム政府は、輸入超過と海外支援を受けている国営企業を支えるため、
為替レートの固定対策を適用した。
その結果、国家銀行は為替レート維持のため、
常に外貨市場に干渉している状況である。
そのため、金融政策の適用が困難になり、
外貨準備資金を保有するリスクも大きくなっている。

国家銀行が為替レートを固定しても、
多額の資金を市場に投入しなければ、
金融政策における主導性は保てない。
しかし、そうなればベトナムの場合、
VND、金、USD間の変換状況にも大きな影響を及ぼすことになる。

現在のベトナムの制度と経済状況の中では、
国家銀行が単独で為替レートの問題を解決することはできない。
原因は国家銀行の権限の限界と、金融政策の効果だけではなく、
経済構造にもある。

ベトナム経済は投資開発によって成長しているが、
投資効果は低い(ICOR指数の急増からも分かる)ため、
1つの成長目標を達成するためには、
投資資金/GDPが徐々に増えていく必要がある。
近年、この割合がGDPの40%を超えたため、
年度政策と金融政策の改善が必要な状況となった。
投資規模が大きくても、その効果が低いため、
インフレは、常に不安要素である。

また、ベトナム国内での生産消費は、
輸入に大きく左右されるが、
VNDの価値が高く維持されているため、
貿易赤字が経済成長と同居してしまっている。
インフレが高く、貿易赤字も大きく、
しかし外貨準備資金が減少しているため、
VNDが常に切り下げ圧力を受けていることになるのだ。

自由市場での為替レートと、銀行レートの差は、
政府管理機関のマクロ的運営能力を反映している。
マクロ要素が安定すると、VNDの価値は安定し、
為替レートの差も埋まってくる。
公定歩合の調整することで、今後の金融政策の厳格化を示すと、
VNDとUSDの金利差が拡大することになるのだが、
こうした動きは、現在国家銀行が独自で実施できることの全てである。



サイゴンエコノミックスタイムズ  2010年11月12日

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