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2011年06月13日

ベトナムM&Aに7つの課題


M&Aは、買収側にとって企業開発のための
「機能性の高い武器」であり、
売却側にとっては投資資金換金の手段である。
「武器」のため、注意しなければ、
両者は簡単に「怪我」をしてしまう。


経済衰退の背景において、多くのベトナム企業は、
「経済の津波」の中で、M&Aを「最後の浮標」と考えている。
ただ、M&Aには7つの難しい問題があり、
企業はこれらの問題を乗り越えなくてはいけない。

ベトナム企業は強い財政力と現代技術を持ち、
世界でもブランドの高い外国投資家を狙っている。
外国投資家と提携できない場合は、
ベトナムの敵やベトナムのパートナーと
交渉しなくてはならない。
ベトナム投資家に譲る場合は、安く売らなければならず、
取引条件もより厳しくなり、通常、企業の支配権もなくなる。

ただ、どんな投資家と提携しても、ベトナムでのM&Aは
様々な問題に直面し、文化の違う二つの企業を合併することは、
買収側と売却側にとって大きな挑戦となる。
以下は、ベトナムでのM&Aにとっての7つの難題である。
これらを乗り越えることが出来るか否かが、
ベトナムのM&A活動の生死を分ける。


1.考え方と文化

アジア企業は主に直感や面目、自己の感覚に基づき
重要な決定を下している。
アジア企業の方針は、製品の個性や
ROI財政指数 (return on invesment、利回り率)、
マーケットシエア、ブランド、特殊技術開発に
重点を置かれる。
ベトナムではこれらの要素以外に、
ベトナム企業の支配人が買収されることに対する
面目や個人の利益を、企業の利益より重視する。

アジアの文化は家庭式であり、
多くの中小企業が「家庭企業」である。
ベトナム人は誰もが高慢なため、ベトナム企業2社が
互いに合併して長期的な関係を維持することは非常に難しく、
通常は合併はせず、大企業が小企業を買収する。
小企業が様々な手段を使うため、
大企業は簡単に小企業の飲み込むことが出来ない。

外国パートナーについても、ベトナム企業は
FDIを通じて企業の一部又は全部を合併する用意がある。
ベトナム企業は、外国投資家はベトナムの営業環境を
よく知らず、企業の価値をより高く評価していて、
企業の運営をベトナムサイドにある程度
任せる必要性もあるだろう、と考えている。


2.明確性と忠実

ベトナム企業の財政資料や活動関係資料は正確性に欠ける。
会計報告書も、営業活動を正しく表していないものもある。
また、社債や財産状況が隠され、
脱税のために複雑な会計資料が作成されている。
企業売却後、すぐにオーナーが新企業を設立し、
売却した企業と競争することもある。

ベトナム企業の支配人は、自分の能力及び財政力について
常により高く発表している。
ヨーロッパとアメリカの規定では、公開した営業状況の
正確性が90%以下となると、「捏造」として糾弾される。
透明性がなく、正しい情報を公開しなければ、
企業は長期的に存在することができない。
信用がなくなると、投資家は離れて行ってしまう。


3.法律

M&A取引実施には7項目の法律に基づく必要がある。
外国投資家は、ベトナム法律の複雑さや矛盾点を
永遠に理解できないだろう。

この法律は、企業法、投資法、競争法、証券法、
環境法、財産売買法、不動産法である。
それ以外にも、関連規定が随時追加されている。
これらの法律に関する規定を、全て遵守するには、
賄賂を払わなければ、最低2年掛かる。
同規模でのタイ企業の買収には、取引完了までに
4ヶ月ほどしか掛からない。

買収側と譲渡側の両者がベトナム企業でも、
手続きは容易ではない。
時間が掛かれば、経費もより大きくなり、
譲渡側と買収側の勢いがなくなり、考えも変わってくる。


4.企業価値の計算

ベトナム企業は、常に企業の価値を
M&A取引の時点までの投資資金(コスト)に基づいて計算する。
ヨーロッパとアメリカは、当時の時価総額と
現金流量(キャッシュフロー) に基づいて計算する。
これは永遠に解決できない矛盾であり、差が大きい。

国際市場に参入するベトナムの大手企業は、
独立コンサルティング会社の利用を検討するが、
コンサルティングの費用や計算結果を恐れ、
いつも合意に至らない。

他にも、無形財産(技術、ブランド、経験、ノウハウ等)の
価値というものがあるが、
ベトナム企業は、無形財産の価値や著作権の価値を
まだよく理解できていない。


5.資金協力

現在、M&Aは銀行又は投資ファンドの支援資金、
又は株式売却、企業の自己資金で行われている。
LBOの資金協力方式がまだ普及していないため、
多くのベトナム企業がLBOを利用していない。

銀行の貸付金利が年20%に上がる背景において、
ベトナムでは投資ファンドが殆ど現金を持っておらず、
証券市場は暴落、流動性が低いたいめ、
M&A活動に対する資金支援がかなり厳しい状況になっている。
ベトナム企業は、外国証券市場に上場して
資金調達をすることには、あまり関心がない。


6.コンサルティング人材

一つのM&Aを実施するために、複数の独立コンサルティング会社を
利用することになる。
全ての作業を実行できる経験と能力を有する企業が殆どないため、
法律、会計監査、企業価値の計算、PR等の作業を、
それぞれ別々のコンサルティング会社に依頼しなくてはならない。
他にも、エスクロー企業(第3者として
買収側と譲渡側の間に立つ企業)にも依頼しなくてはならない。
これらの経費が非常に高く、
手数料は1000万USD以下の取引に対して15%、
2億USD以上の取引に対して5%で計算される。
ベトナム企業は、これらに経費を掛けることを望んでいない。

アメリカとヨーロッパでは1000万USD以下のM&Aに、
常にブローカー (business broker) を利用する。
ビジネスブローカーはライセンスを取る必要がある。
ベトナムではブローカーとして活動している人は多いが、
経験もなく、育成プログラムにも参加していない。


7.M&A取引の後

合併の後、文化の違う2社が、どうやって一つの営業計画で
活動できるかが一番大きな問題である。
両社の事業と、社員間の摩擦が発生し、
これらの矛盾を上手く解決できない場合は、
人材能力を上手く活用できず、営業と利益の一部を失う。


結論

多くのベトナム企業がM&A計画を立てたが、
これらの問題があることで、失望に至っている。
Pham Tri Hung- Indochine Law弁護士によると、
ベトナムにおけるM&Aの35%は成功しているが、
1000万USD以下のM&A実施比率は10%以下。
ベトナム企業が充分に準備をせず、
向き合うべき問題を事前によく理解していないと、
効果の出ない計画に、時間も財産もたくさんかかる。

McKinseyの調査研究によると、現在までに、
成功したM&Aのうちの26%しか
買収側に利益を与えていない。



サイゴンエコノミックスタイムズ  2011年6月13日

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