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2011年10月17日

資本市場の不安定性


10月上旬、ベトナム金融市場では、
ブラックマーケットと銀行ネットワークで
USD/VNDの為替レートが急上昇した。


金売買価格は、ベトナム市場と国際市場の格差が縮まったが、
期待通りになっていない。
銀行ネットワーク内の金利は年間16~17%に上がり、
貸付金利は同20%に上がった。
10月10日から14日までの週に、
国家銀行がOMO市場に16兆VNDを出したとともに、
小規模銀行に対しては、引き続き資金を再供給している。
何が良くない動きの原因となっているのであろうか。


意外な結果

今年の8月末より、国家銀行総裁が
年末までの為替レート及び金利に関する計画を発表した。
例えば、銀行ネットワーク内の為替レートの変動を
平均1%以下確保すること(国家銀行総裁の発表時点で
1米ドル20,628VNDであった)、
貸付金利を年間17~19%に引き下げ、
ベトナム市場と国際市場の金販売価格の差を
40万VND以下の押さえること等である。
現時点での金利、為替レート、金売買価格の変動は、
国家銀行の目標に依然遠い。

為替レートについて、国家銀行は、
収支バランスのより良い状況や外貨準備資金の増加状況に基づき、
変動枠を1%以下に押さえられると信じている。
貸付金利が高いことについては、
1ヶ月以上の預金期限に対し、貸付最高金利を徹底的に
年間14%以下に抑え、1ヶ月以下の預金期限は
同6%以下に抑えることを決めた。

金売買価格の差について、国家銀行は、
幾つかの商業銀行に対して国民から金を調達して
市場に売り出すことを許可した。
市場に売り出された金はオフショア口座を通じて
調達することができる。
この国家銀行の対策により、各商業銀行が
金売買市場に参加することができるため、
為替レートと金利にも積極的な影響を与える。
金投機による利益を減らすと、
金売買に入れられる外貨資金と預金残高が減少する。
ただ、資金調達最高金利を年間14%以下に抑えることは
期待通りの結果にならない。

原因は以下の通り。

(1)預金者が突然に利下げに衝撃を受ける。
一部の国民が預金せず、外貨や金を購入し保管する。
この動きが為替レートに悪影響を与える。

(2)銀行ネットワーク内の資金が小規模銀行から
大規模銀行に移る。

この様な資金の移動により、小規模銀行の資金の流動性がなくなり、
大規模銀行から借金をしなければならない。
結果、銀行ネットワーク内の貸付金利が急上昇する。

このようなことから、年間17~19%の金利で
借金できるチャンスがかなり難しくなる。
小規模銀行も、同様の金利で資金貸し付けができない。
また、商業銀行が年間17~19%で、
企業に借金しないで資金を確保し、小規模商業銀行に
高い金利で貸し付ける。

銀行ネットワーク内の不良社債が徐々に増加する背景においては、
銀行ネットワーク内で貸し付けたほうが安全である。
次に、銀行ネットワーク内で資金を貸し付けるために、
資金流動性がなくなった商業銀行が資産の担保を要求される。
金と外貨も担保資産として利用されている。
そして、商業銀行の大量の外貨資金が担保され、取引ができない。
年末にUSD/VNDの為替レートが上昇する背景において、
大量の外貨資金が各商業銀行で確保されることで、
為替レートがさらに引き上がる。

他にも、国家銀行がOMOを通じ、大量n資金を
供給しなくてはならない。
また、小規模の商業銀行の資金流動性を確保するために、
資金を再供給しなくてはならない。
これらの政策が、長期的に維持されない場合は、
銀行ネットワーク外の資金供給が増加し、
大量な現金が銀行ネットワーク外で流通する。
そして、インフレの上昇の圧力が2012年に再発する。


市場の目標

国家銀行は、政策手段と市場結果の二つの対象を
間違えているようである。
政策手段の実施目標は、国家銀行が期待の結果を得るために、
市場に干渉するものある。
例えば、銀行ネットワーク内の金利は政策手段の対象である。
基本的にはOMO業務又は資金再供給業務を通じて、
国家銀行が銀行ネットワーク内の金利を調整することができる。

市場結果の目標は、政策実施に当たって、
市場が公的機関の指導通りに変動することである。
市場が期待通りに変動しない場合は、政策手段の実施が適切である。
そうではない場合は、政策手段の実施は問題がある。

政策手段の目標は簡単に達成できるが、
市場結果の目標は簡単に達成できない。

国家銀行が金利を年間14%以下に抑える代わりに、
年間17~19%に引き上げなくてはいけない。
また、この目標を実現するため、国家銀行が
各商業銀行に調達金利を14%以下に抑えることを強要する必要がある。
これは市場に大きく干渉する行為であり、
上記の期待通りの結果が発生する。

同様に銀行ネットワーク内でのUSD/VNDの為替レートが、
市場結果の目標である。国家銀行が自分の意向によって
市場結果をコントロールしにくい。

ただ、国家銀行が外貨準備資金を通じて、
外貨売買行為することで市場結果を調整する。

政府の決定No.11でのベトナム経済の直近の目標は、
インフレを抑制することである。
このために、為替レートを安定させるべく
調達金利を高く引き上げる必要がある。

金利が下がることは誰もが期待している。
ベトナム企業は、金利が引き下がる前提で計画を立て、
実施期間を数ヶ月程度伸ばす必要があり、
国家銀行は、市場の変動に配慮し、
自らの政策手段の目標を、再確定する必要がある。



Vneconomy.net 2011年10月17日

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