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2011年12月26日

2011年 ベトナムの貿易を振り返る


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2011年も残りわずかだが、
ここにきて、貿易額が増加傾向となっており、
超過輸入額が減少しつつある状況となっている。


ベトナムの貿易の好調さは、
国際経済が低迷し続けるのに比例しているのだろうか。
実際、この2年でベトナムの貿易業績が
好調を維持しているのは事実である。

以下は2011年のベトナム貿易に関する10のトピックスである。

1. 世界経済の停滞とベトナム貿易の成長

年初、商工省は国際的に貿易が厳しくなるだろうとの予測を行った。
ただ貿易業界は、各国が経済構造を段階的に変えていくなかで、
舵取りをよくできれば、大きな市場を確保できる、と考えた。

アメリカ、EU、日本等は、ベトナムの主力輸出先で、
こうした国との貿易は、成長の困難が予測されていた。
そのため、年初に立てた目標「前年同期比20%増」
は、実現困難と考えられてきた。

ただ、実際の状況は全然違った。
統計総局の集計によると、
現時点で全国の貿易総額は960億USDを超え、
2010年より33%成長し、輸入額は1,060億USD近くに、
前年同期より25%増加する結果となった。

2. アジアの中でも成長株

この1年を振り返ると、
2月はテトの関係で少し伸び悩んだものの、
他の月の業績は押しなべて良好だった。

2010年末、貿易額は60~70億USDで安定していたが、
2011年に入って、一気に発展し、
3月から年末まで貿易額は月平均72~93億USDで推移、
中でも、輸入額は82~96億USDに達した。

12月も下旬に入って、貿易額は2,000億USDを超え、
前年のGDPの約2倍という結果となった。
それによってベトナムは、
東南アジアの中ではフィリピンを超え、
第5位の貿易国となり、
シンガポール、タイ、インドネシアとマレーシアに次ぐ、
位置づけとなった。

3. 超過輸入額は減少傾向

ベトナムは、2年連続して国家収支が赤字となったため、
外貨準備資金は数十億USDの損失となった。
投資計画省の報告によると、
2011年第1四半期までの外貨準備資金は、
3週間分の輸入額にしか相当しないという。

2009年同様、今年も貿易業界は様々な変化があった。
7月は超過輸出状態で、11億USDに達したが、
9月にはさらに15億USDとなった。

ただ、全体的にみると超過輸入状況は良くコントロールされており、
今年は約95億USDで、
前年の126億USDや、2009年の128.5億USDを
大きく下回る結果となった。
比率で見ても、前年の17.5%から、
今年は10.4%に減少している。

政府の情報によると、今年のベトナム国家収支額は、
25億~30億USDの黒字で、
外貨準備資金は輸入額の7.5週間相当まで回復してきているとのこと。

4.組立オンリー脱却ならず

ただ残念なことに、貿易品目の改善は、2011年にはあまりみられなかった。
基本的にベトナムは、繊維、靴加工用の材料、電化製品の部品を主に輸入し、
加工するのが一般的で、国内生産活動の殆どが加工産業であり、
外国企業に大きく依存した形となっている。

輸入については、加工用資材、設備、機材等の輸入額が、
今年も876億USDに達し、2010年より22.5%増、
輸入額全体の82.6%を占めた。

機材、設備、部品等は、主にアジア太平洋地域で生産された物で、
中間技術の輸入のみが増加している傾向が続いており、
この問題の根本的な解決は今年もできなかった。

輸出については、加工産業製品の比率が
前年の59.2%から今年は60.2%に増えた。
それに伴い燃料の比率も11.2%から11.7%に増えた。
一方で、農林水産品の比率は
21.1%から20.3%に減少した。

5. 取引単価上昇の効用は

単価の上昇が、今年の貿易額の増加に
大きく貢献したことは言うまでもない。

米、コーヒー、ゴム、原油、石炭等の輸出価格は、
世界的にも急速に高騰した。
その他、水産物、繊維、木材製品、プラスチック製品、
電気ケーブル等製品の輸出価格も上がった。

昨年に比べ240億USD増加した輸出額の中で、
価格上昇の要素が貢献したと言えるのは72億USD。
農林水産物が33億USD、燃料・鉱物が28億USD、
加工産業の製品が11億USD、それぞれ増額に貢献した。

ただ、同時に輸入品の単価も上昇したため、
国内生産には大きな影響を与えることとなった。

6. 相手国開発の充実化

今年の貿易の成長について、
相手国の開発や品目の充実化も大きな要因となった。
1.アフリカ市場の開発
2.主力貿易先との関係充実化

今年、アフリカへの貿易総額は、
31億USDとさほどの額ではなかったものの、
前年比131%の成長となった。
特に南アフリカとの貿易総額は前年比250%増となっている。
また、新たな輸出先としてニュージーランドの市場開拓も始まっており、
今年の輸出額は前年比29%増となっている。

その他の主力市場に対する貿易総額は、
平均の成長率を大きく増加させる結果となった。
典型的な例は、韓国への輸出額は前年比64%増、輸入額は34%増となった。
その他中国への輸出額は58%増、輸入額は21%増。
日本への輸出額は37%増、輸入額は14%増。
EUへの輸出額は48%増、輸入額は18%増となった。

7. 金価格に振り回される貿易総額

金売買について、国家銀行は逆の行動をとった。
国家銀行は、企業に対し、自由に金輸出できる許可を発給、
その一方で金輸入の許可も直ぐに発給したため、
特定の期間で、金価格の変動が貿易収支に大きく影響する結果となった。

7月の超過輸入額は11億USDだったのに、
9月の超過輸入額はさらに15億USDとなった。
外貨資金の流動が今年の金の「超過輸入活動」に大きな影響を与えた。

国内市場では金の販売価格が大きく調整され、
今年の金価格は前年比39%上昇となった。
地価市場では売値と買値の差が980グルーム当たり
400~500万VNDになった時もあったという。

11月末までベトナムの金・宝石の輸出額は26億USDで、
輸入額は22億USDとなった。

8. 政府の抑制政策の成果は…

2月9日、税関総局は「顧客へのサービス宣言」を発布、
その中で、貿易、投資、外国人観光活動に対する税関活動の管理を
充実化することを約束している。

ただ、政府が政策として行ったのは、
超過輸入の抑制目的で、輸出活動を支え輸入活動を制限するものだった。

5月23日、税関局は四輪車、バイクに対する輸入税制度を修正、
6月1日には酒類、化粧品、携帯電話に対する輸入手続は
ハイフォン港、Da Nang港、ホーチミン港のみで行われるよう規定した。

また、7月19日、税務総局は
薬品、水産物貿易、米輸出、コーヒー輸出、石油販売等で
活動している9社に対する優先措置を決定した。

結果は年末に輸入抑制商品(日用品、9人乗り以下の車両、バイク)
の輸入額は2.55%増に留まり、
全体の増加率25%よりかなり低い結果となった。
これらの商品の輸入額の増加率は5.8%に留まった。

9. 外貨市場への影響

上記の様に、2010年の超過輸入額は126億USDに達し、
2010年最後3ヶ月の超過輸入額は月10億USDを超えていた。
そのため、外貨市場に大きな圧力をかける結果となった。
銀行ネットワーク内と地価市場のレートの差が大きすぎたため、
外貨準備資金を大きく減らし、
国家銀行はVNDを切り下げざるを得ない状況となった。

2月11日、国家銀行はUSD/VNDのレートを9.3%上げたが、
近年で最高の上げ幅であった。
また、レートの変動枠は+/-1%に抑えた。

ただ、今年の外貨市場は基本的に安定している。
今年、USD/VNDのレートは8.47%の上昇に抑えられている。

レート調整で、今年税関局への収入は5兆VND増となった。

10. 携帯電話の輸入

2011年9月、Samsungが2件目の携帯電話組立レーンを導入、
翌月、携帯電話の輸出額は10億USDを達成した。

今年末までで、携帯電話の輸出額は75億USDとなり、
前年同期より257%の成長となっている。
それにより、繊維製品に次ぐ第2位の輸出額製品となった。
今年、携帯電話の超過輸入額は約40億USDに達すると予測されている。



Vneconomy.net  2011年12月26日

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