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2012年12月10日

ベトナム、上がる最低給与 低い労働能力


国際労働機関(ILO)の世界給与報告によると、
2012年は世界的に見ると、給与上昇率が労働能力の増加率を下回っている。
しかし、ベトナムはその逆の現象が起きている。


ILO社長-Guy Ryder氏はこの状況について、下記のように述べている。
2006年~2010年にかけて、名義上の給与は年平均26.8%上昇している。
ただし、インフレ上昇率を加味すると、
実際の給与は12.6%上昇といったところだ。
しかし、ベトナムのこうした上昇率は、
生産能力の増加率の約3倍となっている。

ホーチミン市経済大学-Ho Duc Hung博士は、
ベトナムの労働力について、
インドネシアの10分の1、
マレーシアの20分の1、
タイの30分の1、
日本と比較すると135倍分の1の低さである、と言っている。

ベトナム社会労働研究学院は、Manpowerグループと協力し、
国内9省市、9つの各分野で活動する6,000社を対象に調査を行った。
それによると、国内の労働品質は、
アジア地域でも最低である、と評価されている。

調査対象となった企業のうち、
労働者の技術に関する知識不足がある、とされた企業が25%、
新技術の習得能力が低いと評価された企業が20%、
必要な技能を身につけた労働者を雇用できていない企業が30%、
代表者が労働人材の確保に困難を感じている、
と答えた企業が40%にのぼった。

ベトナム経済研究学院院長-Tran Dinh Thien氏は、
技術を持った労働者が不足する原因として、
現在の経済成長方式と人材育成戦略の矛盾を挙げている。

Thien氏は「この10年、ベトナムはハイテク技術の向上と、
労働能力で経済を発展させる経済戦略を立ててきた。
しかし現在も国内労働者の品質はまだまだ低い。
周辺諸国と比べても低く、労働構造の問題もある。」と述べた。

現在、知識、労働能力、技術といった人的資源が、
ベトナムの経済成長に対する貢献度は約28%と言われている。
他のアセアン諸国では40%、新興国では70%と言われている。
2009年の国内労働能力は年間1,459USDとなった。
しかし、同時期のフィリピンは3,606USD、
韓国に至っては38,253USDと、
周辺諸国とはかなり開きがある事が分かる。

2011年、国内労働能力は更に増加し、年間2,400USDに達した。
ただ統計総局によると、フィリピン、インドネシア、
タイ、マレーシア、シンガポールといった諸外国と比べると、
まだまだ低いとのこと。

この10年に渡って実施されてきた開発戦略が、
思うような成果を残せなかった原因は、
経済構造の転換と、労働者育成の戦略がかみ合わなかったことにある。
今日の経済成長は、資源と資金の開発にのみ注視しており、
国営企業の成長は低く、人材育成の機会はほとんどない。

ILOベトナムの専門家であるYoon Youngmo氏は、
給与上昇のスピードと労働人材の複雑さが段々増してきているという。
そのため、最低給与が労働人材の給与の上昇傾向を調整する
有益な手段として扱うことができなくなった。

政府はこうした矛盾をどう認識し、
またどの様にこの解決していけば良いのだろう?

ベトナムの労働人口は決して他国に引けを取る数ではないが個々の品質はまだ低い。
こうした人材をどのように利用しながら、
質を高め、経済発展戦略に貢献できるようにしていくのかが、
重要な課題になってきている。

このままの状況が続き、賃金が引き上げられる一方で、
労働能力が上昇しないままであれば、
外国投資家にとって、ベトナムの魅力を失うことにもなりかねない。



Vneconomy.net  2012年12月10日

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