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2011年11月17日

ベトナム企業にとって人材とは?


PGS.TS. Le Quan (ハノイ国家大学)
現在、ベトナムの企業では人材の質が大きな問題となっている。
いかにして企業が経済危機を早く乗り越えることができるか、
生産活動を拡大できるかは全てが質の高い人材次第である。
ここではベトナム労働人材の質を上げるための個人、学校、企業の
役割について分析してみる。


1. 低賃金の基盤で企業が急速成長

2011年のベトナム人事管理実状調査報告によると、企業の売上と製品の単価で
非常に低い比率を占めるのが人件費で、その数字は5%以下となっている。
さらには、売上や利益に対する労働者一人当たりの平均生産能力も低いが
(約6500USDの売上/一人/月、約1200USDの利益/一人/月)給与自体は
ここ数年で年間平均18%と上昇している。そして、企業の急速成長は年間平均で
42%以上の数値を低賃金な基盤で達成している。ここで知りたくなるのが
いつベトナム企業は人材が重要な役割を持つ「知識経済」に入るのかである。

2. 質の高い人材と企業価値の改善

現在、多くのベトナム企業が以下の問題を抱えている。

・売上は減少しているが、販売単価の値上げが不可能

・給与アップによるプレッシャー(年間18%)

・借金の金利が高額 (民間企業で金利は年間平均21%)

・USD高による入り口の経費増加

結果的には利益が急激に減っている。多くの企業が生き残るか倒産するか?
営業分野を変えるか?企業の付加価値を上げる方法が何か?という悩みに
直面した。

低賃金、資源環境、政治的な関係を利用して企業の付加価値を上げることは
安定をもたらさない。正解は「質の高い人材の雇用」である。

3. FDI企業は質の高い人材を利用しているか?

FDI企業において多くの人事担当者は、人材の管理は行政色が強い業務のため、
労働関係の問題解決しか担当していないと言っている。つまり、人材開発、
人事管理業務の充実化、人材管理戦略作成等が企業では重要視されていないのだ。
外国の企業はベトナムに人材創造開発センター、人材研究開発センターを置かず、
あるのは加工工場だけである。先進国の工場はスタッフの数が非常に少ないが、
ベトナムへの進出時に外国企業が機械の代わる人間を利用しているか?
回答は安い賃金を利用することである。

これらのFDI企業には安い賃金を利用する戦略がある。ベトナムでは給与が徐々に
高くなってきているため、これから数年後という短期間だとFDI企業は最低限の
給与しか支払わず、長期的には段階的な自動化が行われ、企業の主導で使用する
人材を減らしていくことになるだろう。

4. 学校は「知識経済」の基盤を作る場か?

ベトナム企業の人事管理実情報告書によると、学校と連携して人材を雇用する企業は
全体のわずか3%しかない。また、多くの企業が大卒の学生に対して関心を持たない。
企業の観点は卒業したての学生に書類の作り方やメール送信、パートナーとの会話、
勤務態度といった基本的な技能教育にかなりの時間が費やされるというものだ。

質の高い人材が企業内に不足して、価値も大きくなっている。英語が上手な学生は
すぐに仕事を見つけ、英語が下手な人の2倍も給与を貰える。だが、ベトナム大学の
卒業生には英語を上手く使える人が少ない。調査結果によるとベトナム大学卒業生で
IELTS 5.5以上の英語能力を持っている人は5%以下である。ベトナム大学は企業の
需要に応えられる人材養成に力を注ぎたくても教育内容が明確にできていない。
そのため、現状では大学生はいくら頑張っても良い成績が取れず、市場のニーズに
対応できる技能だけを身に付けている。

企業の協力が得られないと学校ではニーズに対応できる人材が養成できない。
企業は学校教育の質を批判するが、人材養成に対する責任が不足し過ぎている。

5. 社会と「ブーム」のドミノ反応

誰でも外国語は重要という認識を持っているが、週に10時間の外国語学習をする人は
あまりいない。ある人は英語を話すために3万USDを出しても良いと言ったが、英語の
能力はお金で買えるものではなく、それ以外に時間と努力が必要である。
時間を浪費したと思っている人は多いが、将来を改善するための行動は伴わない。

ベトナム社会では現在の状況に満足する人が多い。貧困生活からスタートしたため、
満足しやすくなっているのだ。安定した仕事があり、たまに土地を売買して大金を
手にすると満足する。このようなことが原因となり、新しい知識を高めて創造性を
維持するという考えは持たない。これはベトナム経済の発展を制限させることであり、
質の高い人材基盤での「知識経済」育成を困難なものにしている。

6. 市場化経済の政策は企業にとって人材向上の支え

近年では、国営企業の民営化が企業の主導性と営業活動の効果を上げるためには
最良と考えられている。民営化された後の企業は能力が劣る人材を解雇し、職員数を
減らし、再教育しなくてはならないが、それも現状での大きな問題である。

直接的には能力の低い人材が多いということもあるが、これまでに企業の就職環境で
築かれてきた文化が良いとは言えないため、労働者は新しい就職環境に対応する意識と
気持ちを全く持っていない。

経済体制と経済政策を変えることが、国家予算から安定した給与を貰える労働者に
大きな衝撃をもたらした。

7. 経済危機と人材向上の必要性
 
経済危機の影響で消費力、生産量、売上、利益は当然のように減少する。生産能力を
維持するため、企業の経費を減らすために、企業は人材を解雇する。経済危機発生時に
企業は再構築され、労働者はそのことによる失業を恐れる。

ベトナムでは長い歴史の中で何度も経済危機が発生しており、人材解雇という言葉は
まだ普及していないが、人材を減らすことが今のベトナム企業では優先されている。

Vef.vn 2011年11月17日

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